HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報653号(2024年4月 1日)

教養学部報

第653号 外部公開

コマメシ頌

田村 隆

 新型コロナウイルス感染症が五類に移行して初めてのコマメシ記事となる。以下、新しい店も交えて補訂した。営業日と時間の確認をお願いしたい。

 まずは王道の「学食」、生協食堂から。一階「Cafe­teria若葉」(一食)と二階「Dining銀杏」(二食)。私も普段の昼はほぼこのどちらかで、『逆評定』にも目撃情報を書かれたことがあるが、二限が終わると一気に混雑する。二階の玄米オムライス、一階の冷やし担々麺を薦めたい。ハチ公生誕百年の昨年十一月には上野ハチ公ラーメン(醤油・塩)が登場。「上野」とはハチ公の飼い主、農学部上野英三郎教授のこと。二〇一八年には『東京大学駒場キャンパス 一食全メニュー総覧』という同人誌が編まれ、翌年二食の情報も追加された。食堂の隣にはイタトマ系列の「Caffé VIGORE」(ヴィゴーレ)があり、昨秋に再開した21KOMCEE West地下の「KOMO­REBI」では二種のオリジナルブレンドコーヒーをテイクアウトできる。キャンパス内二箇所のキッチンカーは曜日によってメニューが異なるので、正門前の案内板でチェックしよう。銀杏並木沿いのフードショップは、1号館改修に伴い二月二日に三十三年間の営業を終えた。

 「杯を上げよ」という意味のフランス語が店名の「Lever son Verre」(ルヴェソンヴェール)のランチは、日替わりの肉料理・魚料理もしくは南仏野菜のトマト煮(Table For Two)から選び、パン・サラダビュッフェと食後のコーヒーもしくは紅茶が付いて千五百円(本学学生は学生証提示で千三百円に割引)。東大駒場友の会の会員には飲み物のお替わりをサービス。二階の店名「橄欖」(かんらん)はオリーブの訳語。教養学部前身の旧制一高の校章はオリーブと柏葉だった。

 三昧堂の前を通って西門を出る。駒場Ⅱキャンパスの時計台横の生協食堂はかつて国産旅客機YS─11の設計室だったという歴史的建物。堀越二郎達も出入りしていたのだろう。オーガニックレストラン「ape cucina naturale」(アーペ。学内向けメニューあり)や隣の「Bio Café ape」、キッチンカー「駒場東大RCAST村」のほか、「食堂コマニ」には食材にこだわった各種定食が揃う。タイミングがよければ食堂内でのランチタイムコンサートやミニレクチャーに出くわすことも。正門隣には昨年五月に「BAKER Aoyagi」がオープンした。向かい側には日替わり定食のある喫茶店「林檎の樹」。駒場公園の奥にある日本近代文学館内の「BUNDAN」は本に囲まれたカフェで、メニューには文豪の名が付く。コーヒーのモカは「寺山TERAYAMA」。由来は教科書でお馴染みのあの短歌のはず。

 次に駅西口側へ。坂下門の愛称蕎麦屋門は閉店した蕎麦処「満留賀」(まるか)によるが、その跡に人気のベーカリー「Le Ressort」(ル・ルソール)がある。建物の二階は、お好み焼きともんじゃ焼きの「楓」。駅近くには、半地下にあるカレーの「LUCY」、大きなチキンカツの「Oaks」、隣には学生運営のパスタ店「TAMA­RIBA」が昨年七月にオープンした。その隣はたい焼きの「雅にぃ」。

 駒場小学校側の坂の途中にある喫茶店の「DORA」では、各所に並んだ市松人形の視線を感じながらのコーヒーと読書もよいし、ポークジンジャーなどのランチもある。「COLORADO」はドトール系列でモーニングあり。イタリア料理店「MARU­MOREO」は昨年末に閉店した。坂の上には「うつわとカフェLim.」。ここのメニューにもほうじ茶ラテがあるが、ちなみに一高名物教授の菅虎雄は昼時に教官室で茶を焙じ、できたほうじ茶を角砂糖と熱い牛乳の入った茶碗に注いで飲んでいたという(本紙第一一七号)。昭和十年代前半の話で、当時の教官室(通称「大部屋」)は今の1号館一〇五・一〇六番教室にあったらしい。

 駅西口に戻って今度は淡島通りに出る坂を上ってゆくと、右手にあるのがラーメンの「麺酒論嚆矢」(ランチ営業あり)や少し先の「GRAT­BROWN Roast and Bake」。本格的なコーヒーが味わえる。「Una pesca bianca」(ペスカビアンカ)は生牡蠣が名物。淡島通りの「福島屋」のカレー南蛮はとろみが強めで温まる。菓子処「さか昭」の桜餅(長命寺)は、西日本出身の新入生は驚くかもしれない。「成寿司」は比較的手頃で美味しく、近くの「アンサンブル」は地下の音楽喫茶室。出前で知った「巴屋」のカツカレーはいかにも蕎麦処らしい和風カレー。「えびすや」のカキフライは店の看板に添えられた「美味しいものはここにある」の宣言通り。

 一方、東の梅林門を出て階段を下りると東大前商店街へ。「菱田屋」はテレビや雑誌でも取り上げられる人気店で行列必至。『菱田屋の男メシ!』(二〇一七年)というレシピ本まである。近くには姉妹店「菱田屋酒場」(お酒は二十歳になってから)。たこ焼きの「みしま」の跡にはお洒落でユニークな日替わりランチのある「888」ができた。「みつばち」と読む。「キッチン南海」の黒いカツカレーも名物。ネパールカレーの「MUSKAN」、近くにはサンドイッチストア「STAN」も。「角屋」のサバサンドは柴漬入りで和洋折衷の好例。「TOKYO PASTA WORKS」ではその「角屋」の店員さんお墨付きの生パスタを。一九四九年創業(教養学部と同い年)という「太田屋」は、精肉店の弁当だけあって、ミートボールと揚げたての唐揚げが人気。韓国料理の「박식당」(パクシクタン)はサムギョプサル丼などのテイクアウトもできる。スイーツは、ティラミス専門店の「Tiramisu Home Made」を薦めたい。

 体育館側の裏門を出た界隈では、蕎麦の「絆」は天ぷらとごはんの付いたランチメニューがお得。「山手」は、ゆきラーメンが名物。隣には弁当の「たけ」がある。ラザニアなど、「Letterpress Letters Canteen」の日替わりランチはInstagramで確認。「FIAT CAFFE­SHOTO」の喫茶・軽食は車の展示とともに。

 野球場の土手の桜並木を通って北門を出る。三田用水の暗渠にほぼ沿ったコスモス(航研)通りを左に少し歩くと山小屋風の「フレッシュネスバーガー」一号店が見える。隣の「COSMOS JUICE TOMIGAYA」は昨年五月にオープンしたジューススタンドで、コールドプレスジュースを提供。さらに進むと、生ハムとチーズなどイタリア食材の「PIATTI」(ピアッティ)や二郎系ラーメンの「千里眼」がある。夏季限定の冷やし中華も人気。向かい側のビル四階「俊樹」(しゅんじゅ)では和洋のランチを。逆に門から右方向に歩けば、生マッシュルームを使ったサンドイッチなどの「BONDI」(ボンダイ)。その先の「THE COFFEE­SHOP ROAST WORKS」のコーヒーは定評があり、前述の「KO­MOREBI」のコーヒーもここの監修と聞く。門に戻り、通りを渡ってすぐのところにはアコウダイなどの焼魚定食がお薦めの「うしお」、そのまま進むとフレンチの「Chambre Avec Vue」(シャンブルアヴェクヴ)がある。「岬屋」の黒飴、夏の水羊羹と秋の栗蒸羊羹(竹栗蒸)も名品。渋谷富ヶ谷二郵便局隣の「斉藤米店」では葉唐辛子などのおにぎりを買える。「むぎ」では豊洲の美味しい魚を楽しめる。メニューは日替わりだが、冬にナメタガレイの煮つけがあったら是非召し上がれ。

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(超域文化科学/国文・漢文学)

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