HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報655号(2024年6月 3日)

教養学部報

第655号 外部公開

<時に沿って> 刺激あふれる駒場へ帰ってきて

川田拓弥

image655-5-3.jpg 二〇二四年四月一日付で広域科学専攻相関基礎科学系塩見研究室の助教に着任いたしました、川田拓弥と申します。専攻は物性物理実験で、主にスピントロニクスを背景とした研究を行っています。東大理科一類に入学後、進学選択では理学部物理学科に進学し、その後理学系研究科物理学専攻で修士・博士の学位を取得しました。博士課程修了後、大阪大学ナノスケール物性研究室で学振ポスドクとして一年間在籍し、このたび八年ぶりに駒場キャンパスへ戻ってきた次第です。久々に足を踏み入れた見覚えのある風景に懐かしさを覚える一方で、ところどころ当時と違う景色が見受けられ、時の移ろいを感じながら日々を過ごしています。

 思い返してみると、今の物理学という道を志したのもこの駒場キャンパスでした。学部一、二年のころはまだ専門科目も決まっておらず、多彩なバックグラウンド・考え方を持つ友人たちと交流し、文理問わず様々な科目を受講できる、そういった刺激的な環境でした。入学当初は数学を専攻しようと意気込んでいたものですが、数学も含めて幅広い分野に触れることで、自分の興味の幅が広がっていくのを実感しました。そうした中で自然現象を記述する物理学に出会い、必修授業や総合科目、自主ゼミを通して徐々に自分の中での物理学への志向が育まれていったように思います。

 一度本郷の理物の空気感になじんだ後に駒場に戻ってくると、これほど多種多様な研究テーマの研究室・人材が一つのところに集まっている総合文化研究科という場所の独自性を改めて実感します。学生も教員も、経歴や興味の方向性が人それぞれで、雑談するだけでも新鮮な気持ちになります。居室の本棚の卒業研究概要集を開いてみれば、数学に生物学、果ては認知科学にスポーツ科学まで、全く異なる背景で行われてきた研究の数々が並んでいます。居室を出て廊下を歩けば、自分の知らない分野の紹介ポスターが次々と目に入ります。私は幸運にも学生時代に専攻していた研究テーマに一つの着地点を見出すことができ、今まさに次のテーマに手を広げようとしている段階にあります。そうした転換期に、この刺激あふれる駒場に着任できたことは自分にとって意義深いことです。自分の得意とする手法を他の領域とコラボさせられないか、他の分野を自身の今後の研究に取り入れられないか、思ってもみないような化学反応で全く新しい研究領域を展開していけるのではないかと期待が膨らみます。まだまだ未熟な身ではありますが、駒場キャンパスの一員として、これから積極的に研究・運営に携わっていきたいと思います。

(相関基礎科学/物理)

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