教養学部報
第656号
<時に沿って> 変わらないもの
高木桃子
はじめまして。二〇二四年四月に植物微生物相互作用研究室の助教に着任いたしました、高木桃子と申します。私は二〇二〇年八月に愛媛大学大学院連合農学研究科にて学位を取得し、当時の専門は植物病理学でした。中でも〝植物の病原菌に対する防御機構〟の複雑さや奥深さに魅力を感じ、その後も〝植物と微生物の相互作用〟という分野は大きく変わらないものの、本質へ迫るためのアプローチ法は環境と共に変化してきました。植物の生育を良くする有益な微生物と宿主植物との関わりあいにおいて、これまで培ってきた植物病理学研究の基盤や機械学習を用いた表現型解析手法の導入といった視点を活かしながら、より面白い研究を展開させられないかと日々邁進しております。
私が研究の道を進む第一歩は、中学三年生の頃だったように思います。進学先候補だった岡山県のノートルダム清心女子高等学校が、文科省のスーパーサイエンスハイスクール指定校として理系教育に特化した「生命科学コース」を始めたと知り、願書締切当日まで悩んだ挙句、夜も更けた頃に電話し、生命科学コースへと進路変更した思い出があります。(当時の先生方には大変ご迷惑をおかけしました。)その後、生命科学コースでの三年間は大きな学びを得ることができました。特に、高校二年生の頃に取り組んだ〝カタバミ科植物の葉の就眠運動の記録〟をメインとした課題研究をきっかけに、動かない植物がどのように環境ストレスに対応しているのか? それはマクロ・ミクロな視点では植物にどのような変化をもたらすのか? という点に惹かれるようになりました。そして、漠然とした興味を持ったまま学部一年次の教養科目で植物病理学と出会い、植物病理学ゼミを志望することとなります。その後、私の大切な研究基盤を築いた出身ラボや学位研究と出会いました。
こうして学生時代を振り返るだけでも、紆余曲折が思い出されます。その過程では、私の興味関心が少しずつ移り変わってきた一方で、「動かない植物が如何に環境に適応しているか、その生き様に興味がある」という〝変わらない軸〟の存在を感じます。
ここ教養学部は、分野横断型の研究活動を行いやすい環境と聞きます。学生さんも今まで出会った農学部・理学部の方達とは一風変わっていて、この学部・研究科の良さを存分に活かした研究活動を志す方々が多い印象です。これからはそんな学生さんや同僚の方々と共に、変わらないものを大切にしながらも従来の枠にとらわれない、そんな魅力的な研究を展開していけたらと思います。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
(生命環境科学/生物)
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