教養学部報
第658号
真夏のキャンパスでの一幕 ──オープンキャンパス報告
大塚 修
八月に入って学生の姿もまばらになってきたキャンパスにおいて重要な行事が開催されていた。「東京大学オープンキャンパス2024」である。今年度は八月六日(水)、七日(木)の二日間、昨年度に引き続きオンライン形式で開催された。そのため当日がオープンキャンパスであったことに気づかなかった方も多いのではなかろうか。
教養学部の企画については、オンデマンド企画とリアルタイム企画を組み合わせる形で実施された。この行事は、年によっては教養学部の定期試験の日程と重なる場合もあり、プログラムが窮屈になりがちだが、今年度は幸いにも重ならず、余裕を持たせた形でプログラムを組むことができた。
オンデマンド企画としては、真船文隆教養学部長による「挨拶」、増田建副学部長による「教養学部説明会」、平地健吾大学院数理科学研究科長による「挨拶と大学で学ぶ数学の紹介」を筆頭に、各学科の紹介動画などが教養学部の特設サイトに掲載された。じつはこれらの動画は一年中公開されており、教職員や学生の皆さんが閲覧しても興味深いものであるので、是非とも一度訪れてもらいたい。
リアルタイム企画は二日に分けて行われた。初日の六日には、十四時から十五時過ぎまで、PEAKの「Q & A Corner (in English)」がZoomウェビナーで行われ、のべ一六九名の参加を得て活発な質疑応答があった。オープンキャンパスについては、感染症対策関係の諸制限が撤廃された後もオンラインで行われ続けているが、それは、現在海外にいる高校生など遠方からの参加者を得られるという点で利点の一つになっている。
二日目の七日には、十時からそれぞれ五十分ずつの持ち時間で、教養学科、学際科学科、統合自然科学科の各学科の進学相談・質問コーナーが設定された。学科長が司会を務める中で、学生が質問に答え、教養学部の雰囲気を紹介していた。オンデマンドの学科紹介動画もそうだが、学生たちが積極的に関わってくれたことで、教養学部の魅力がより伝わっていたように感じた。このセクションではのべ一三七名の参加者を得た。
続いて、十四時からそれぞれ五十分ずつの持ち時間で、各学科を代表する教員による模擬講義が行われた。統合自然科学科の今泉允聡准教授は「人工知能・深層学習の原理に迫る──数学の挑戦」、教養学科の棚瀬あずさ准教授は「『百年の孤独』から始めるラテンアメリカ文学入門」、学際科学科三村太郎准教授は「近代科学が生まれるまで──三平方の定理からみた科学の歴史」と題する講義を行い、教養学部における多様な研究の在り方を伝え、高校生が進路を選ぶ際の指針を示した。Q&A機能により積極的に質問が出され、高校生が大学教員と対話する貴重な機会となった。このセクションではのべ三〇三名の参加者を得た。模擬講義では高校生以外の参加者も多く得たが、このことは、オープンキャンパスという行事が様々な顔を持っていることを示唆している。
オープンキャンパスは社会に対して大学という場をアピールしていく重要な場の一つである。感染症対策の諸制限がなくなり様々な形が考えられるようになった今、このキャンパスの魅力をアピールするために、今後もより良い形を模索し続けていくことが望まれる。
この行事は各学科の学科長や講演者の先生方や学生の皆さん、そして、職員の方々の奮闘の結果、大成功に終わったと言えるだろう(特に、広報・情報企画チームの三人の職員の方々は当日の運営だけでなく、企画の策定や動画の編集にかかる様々な業務を担ってくださった)。この場を借りてあつく御礼を申し上げたい。
(前学部長補佐/地域文化研究/歴史学)
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