HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報659号(2024年12月 2日)

教養学部報

第659号 外部公開

<時に沿って> 思いがけない「出会い」と「歩み」

長谷部政治

image659-3-2.png 二〇二四年九月一日付けで、総合文化研究科講師に着任いたしました長谷部政治と申します。私は動物生理学を主な専門としており、地球上の動物が多様な環境に柔軟に適応していることに興味を持ち、それを可能にしている脳を中心とした神経内分泌機構に関する研究を行っています。現在は、様々な環境に適応し最も繁栄した生物グループの一つになっている昆虫に着目し、昆虫の柔軟な環境適応を支える「休眠」システムのなぞに主に挑んでおります。多くの昆虫は、冬などの厳しい環境を感知・予測すると、一時的に発育・生理活動を休止させる「休眠」状態に入ります。「昆虫はどのように厳しい環境の到来を正確に予測しているのか?」、「環境変化に応じてどのように休眠を適切に誘導しているのか?」といったこの休眠研究のクエスチョンについて、生理学・形態学・遺伝学といった様々な技法を駆使してその核心に迫っていきたいと考えております。

 さて、今では研究者として日々研究に明け暮れている私ですが、大学生のころは全く研究者になることを想像しておりませんでした(「過去」の私が「今」の私の日々を知ったら驚愕するでしょう)。

 そんな私が研究者になるきっかけになったのは、Neuronal firing(神経発火)との「出会い」でした。研究に対してあまり興味を持っていなかった私ですが、初めてコオロギの微小脳の、脳を構成する更に小さな一個の神経細胞で生み出される神経活動を、リアルタイムで記録されていく様子を見て深く感動したことは、今でも覚えております。この小さくも美しい神経活動に魅せられてしまったことが、研究者になる第一歩になったことは間違いないでしょう。

 更に、数々のとてもユニークで探求心溢れる研究者の方々との「出会い」が、私の歩みを後押しして下さりました。東京学芸大学における学部生時代・東京大学における大学院生時代、そして大阪大学における助教時代に、数々の一流の研究者の方々・研究者を目指す若い方々とのご縁に恵まれました。皆さん、研究に対する卓越した知識・技能をお持ちであったことはもちろんですが、何よりも研究を心から「楽しんでいる」姿が輝いて見えました。そのような研究者の方々と交流していく中で、私自身の中にも研究に真摯に取り組み、楽しんでいくマインドが自然と培われていったのだと、今では実感しております。

 このような数多くの素敵な「出会い」を経て、今回、研究者・教育者として教養学部・大学院総合文化研究科における研究・教育活動に携わる「ご縁」を頂きました。今後は、私自身が本学の学生さんたちに、生物学の神秘さ・美しさ・面白さを伝え、研究を「楽しむ」姿を見せていくことで、学生さんたちのこれからの「歩み」において、一つの良い「出会い」になっていければと思います。

(生命環境科学/生物)

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