HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報661号(2025年2月 3日)

教養学部報

第661号 外部公開

<送る言葉> 後藤春美先生のご退職にあたって

小川浩之

 同じ大学、そして同じキャンパスに研究分野が近い研究者がおり、お互いの研究に関心を持ちつつ、尊重しあう関係を享受できるのは、非常に恵まれたことであろう。二〇二五年三月末に後藤春美先生が定年退職されるにあたり、あらためて感じるのは、自分がそのような恵まれた環境に約一五年間いることができたということである。私にとって、二〇一〇年秋に駒場に着任する前から尊敬する研究上の先輩であった後藤先生が、自分の研究に関心を持ってくださり、さらに、その価値を評価し、ご親切に励まし続けてくださったことは、本当にありがたいことであった。

 主に研究の対象とする時期は、後藤先生は二〇世紀前半、私は二〇世紀後半と、隣接しつつも異なるが、イギリス帝国史、イギリスや国際連盟、国連、コモンウェルス(英連邦)、欧州連合(EU)とその前身となる欧州の諸共同体といった国際機関を軸に据えた国際関係史など、研究テーマには重なる部分が多い。後藤先生のご著書やご論文、そして様々な場所での会話や議論から、本当に多くのことを学ばせていただいてきた。

 後藤先生と会話や議論を重ねてきた場所には、駒場キャンパスはもちろん、様々な学会や研究会の会場、そしてロンドン郊外のキューにあるイギリス国立公文書館(TNA)が含まれる。TNAの二階にある閲覧室は広く、後藤先生と(利用者の方が特に希望しなければ、文書館側から割り当てられる)席が近くになることはあまりなかったように記憶している。他方で、一階のカフェで昼食をとりながら、あるいはコーヒーや紅茶を飲みながら、しばしば他の研究者や大学院生も交えつつ、それぞれがそのときに読んでいる文書や関心があるテーマについて話したり、そのときどきの国際情勢やイギリスの政治・外交・社会・経済などについて話しあったりする時間を持つことができた。

 駒場での教育や学務においても、後藤先生とは、後期課程のイギリス研究コース(通称イギリス科)と前期課程の英語部会で所属が重なっており、大学院では専攻が異なるものの、やはり研究分野の近さから、これまで何度も博士論文や修士論文の審査やコロキアムなどで同席してきた。そうしたなかで、東大のことも駒場のこともほぼ何も理解できていない状態で着任したうえに、そもそも何かと手際が悪く、しばしば途方に暮れていた私に対して、後藤先生は、様々なことを教えてくださるとともに、親身になって相談に乗ったり、温かく励ましたりしてくださった。

 後藤先生がこのたび定年を迎えられるに際して、まずは、これまでお世話になってきたことに心から御礼を申し上げるとともに、本当にお疲れさまでしたとお伝えしたい。そして、ご退職された後も、引き続き、TNAなどの文書館や学会や研究会などの機会にお会いし、お話ができるのを楽しみにしていますともお伝えしたい。

(地域文化研究/英語)

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