教養学部報
第662号
<時に沿って> 来し方とこれから
番定賢治
二〇二四年五月より総合文化研究科国際社会科学専攻助教に着任いたしました、番定(ばんじょう)賢治と申します。国際社会科学専攻の教務関係事務を担当する他、二〇二五年度Sセメスターには「初年次ゼミナール文科」を担当いたします。
私の専門分野は日本政治外交史、特に一九二〇年代から一九三〇年代までの日本外交と国際機構の関係について研究してまいりました。日本政治外交史とは不思議な学問分野で、いわゆる近現代の日本の歴史を研究するという点では日本史研究の一分野なのですが、日本の外交政策と世界各国の外交政策の相互作用について研究するという点では国際関係論研究の一分野であるとも言えます。また、日本における政策の決定過程を分析するという点では政治学研究の一分野でもあります。ひとくちに日本政治外交史と言っても「日本」「政治」「外交」「史」のどれに力点を置くかは人それぞれと言うべきところで、研究生活の中で力点を徐々に変えていく方もいます。しかし、このように日本政治外交史という言葉が多義性を含んでいることは、日本政治外交史という一つの学問分野の中に幅広い発展の可能性が秘められているということの証なのではないかと思います。そのような可能性に面白さを見出すことができるからこそ、私もこれまで研究を続けているのだと思います。
とはいえ、私が大学入学後から一貫して日本政治外交史に関心があってその研究者を目指していたかと言うと、そうではありません。私は学部時代にはバンドサークルに所属しており、学部時代の前半は教室にもいなければ図書館にいるわけでもなく、もっぱらサークル棟の廊下やレンタルスタジオ、時には学園祭のステージでサックスを吹いていました。それでも日本政治外交史の講義や演習を受けて徐々にこの分野に興味を持ち、この分野の教科書や研究書を手に取るようになり、最終的にこの分野で論文を書いて研究を続けようと思うようになったのは、学部時代最後の秋学期になってからのことでした。行き当たりばったりの学部時代を経て大学院で日本政治外交史の研究を続けることになりましたが、それでも幸運なことに今こうしてこの駒場キャンパスで研究を続けております。それはこの開放的で活気に満ちた駒場キャンパスで体験した様々な学びが今の自分の中に生きているからかも知れません。
駒場の授業と教育環境は、自分が学びたい学問分野や自分が将来勤めたい職業を既に決めている学生の皆様にとっても十分期待に応えるものであるだけでなく、それらを決めかねている学生の皆様にとっても、後の人生につながる経験を得るために大いに役立つものであると思います。そういった駒場での学びが学生の皆様それぞれにとってかけがえのないものになるよう、微力ながら精一杯の力で自分が貢献できることを願っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(国際社会科学)
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