HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報662号(2025年4月 1日)

教養学部報

第662号 外部公開

辞典案内 2025 トルコ語

髙松洋一

土日辞典
①「トルコ語辞典 ポケット版」(竹内和夫、大学書林、1989年、544頁、7500円)簡略な用例の記載、巻末の語尾・接尾辞一覧表および日本語トルコ語基本語彙など、学習面での利点は大きい。しかし語彙数が少なく(約16000語)、特に外来語が致命的に不足している。不正確な訳語や、刊行が古いため今日のトルコ語の実態に合わない点も散見され、中級では土英辞典などと併用したい。大幅に改訂増補した1996年刊の机上版もあるが(約22000語)、30000円もするので図書館での利用を勧める。

日土辞典
②「日本語トルコ語辞典」(竹内和夫、大学書林、2000年、864頁、30000円)見出し語の日本語ローマ字表記が独特で(ci=「ち」、cu=「つ」など)、①と同じ編者によるため古い部分もあるが、旅行用単語帳のような③「デイリー日本語・トルコ語・英語辞典」(川口裕司 監修/三省堂編修所 編、三省堂、2020年、768頁、3200円)よりは辞典としての使用にたえる。

土英辞典
④Redhouse Sözlüğü Türkçe-İngilizce (Bezmez他、SEV-YAY、2013年、1002頁)最近の文献を読むのに適した10万以上の語彙を収める定評ある辞典。同じ出版社の英土辞典Redhouse Sözlüğü İngilizce-Türkçeと併せたインターネット接続不要のパソコン/スマートフォン用アプリRedhouse Sözlük İngilizce<->Türkçeが費用対効果抜群だったが、現在は新規にダウンロードできなくなっている(2024年9月版元に確認済み)。ただしトルコ国内での決算手段があれば、トルコのサイトから最新版のスマートフォン用アプリRedhouse Dictionaryが有料でダウンロード可能。⑤Redhouse Sözlüğü Türkçe/Osmanlıca-İngilizce (Alkım他、SEV-YAY、2014年、1340頁)④では除かれたアラビア語・ペルシア語からの大量の借用語を含む16万語以上を収録する1968年初版の土英辞典(当初はRedhouse Yeni Türkçe-İngilizce Sözlük = New Redhouse Turkish-English dictionaryというタイトルだった)。名前を変えて出版され続けていることからわかるように、やや古い文献とくに文学・歴史書を読むためには今日でも非常に有用。ラテン文字見出しだが、手書きのリカー書体によるアラビア文字表記も併記。⑥Turkish and English Lexicon (Redhouse, Çağrı Yayınları、2014年、2240頁)④と⑤のもとになった1890年初版の大辞典の入手しやすい縮刷版。アラビア文字見出しで収録語彙数は⑤をはるかにしのぎ、1928年の文字改革以前の文献を読むのに必須であるが、正確なラテン文字転写を知るためには⑤などと併用する必要がある。ベイルート出版の原寸大復刻版もあるが、こちらは携帯にやや不便。

土英・英土辞典
⑦Langenscheidt Standard Turkish Dictionary(Akdikmen, Langenscheidt、2011年、1104頁)例文はないが、比較的語彙が多く、二色刷りで見易い良質な初学者向き辞典。現在は版元品切れ(同出版社の土独・独土辞典はアプリ版も含めて入手可能なので、ドイツ語の得意な人にはお勧め)。オンラインのみで提供されている土英・英土辞典としては、⑧tureng (https://tureng.com/en/turkish-english)や⑨sesli sözlük dictionary(https://www.seslisozluk.net)がある。Web版よりやや使い勝手は劣るが、それぞれ無料のスマートフォン用アプリもある(要インターネット環境、⑨のみWindows用アプリもあり)。⑧は日々更新されている膨大な対訳データベースに基づいており、訳語の羅列から帰納的に意味を考える必要があるが、他の辞典に見られない専門用語やイディオム、コロケーションを調べるのに便利。⑨は⑧と異なり、語義が大まかな意味ごとに番号をつけて配列されているので把握しやすい。ただし音声付きを標榜するものの、録音ではなく合成音なので、母音の長短や強勢が実際の発音とは異なることが多い(音声についてはネイティヴによる発音が聴ける下記⑩や⑪のWebサイトあるいはアプリを推奨する)。

土土辞典
⑩Türkçe Sözlük (Türk Dil Kurumu、2023年、2巻、3735頁)トルコ言語協会発行の現代トルコ語の規範となる辞典。2023年に12年ぶりに大幅改訂され、13万を超える語彙を収めるようになった。出版元のサイトhttps://sozluk.gov.trでは音声付きのGüncel Türkçe Sözlükとして公開され、同協会発行の他の辞典とともに串刺し検索が可能(登録不要・無料)。インターネット環境が必要だが、単独の無料スマートフォン用アプリTürkçe Sözlükもある。⑪Misalli Büyük Türkçe Sözlük (Ayverdi, Kubbealtı、2020年、1巻、1412頁)見出し語は6万を超える程度だが古語から新造語までバランスよくカバーし、正確な語源、丁寧な語釈、多様な作品から採られた10万もの豊富な用例が特徴。3巻本のハードカバー版もあるが、1巻本の大判ペーパーバック版が便利。出版元のサイトhttps://lugatim.com/でオンライン検索も可能(登録不要・無料)。2024年からは音声付きの公開となり、弱点がなくなった。Web版と同内容のLugatımという無料スマートフォン用アプリもある(要インターネット環境)。なお⑧⑨⑩⑪のスマートフォン用アプリはいずれも日本のApp Store、 Google Playでダウンロード可。また上記の紙媒体の辞典の多くは駒場図書館に所蔵されている。トルコで出版された辞典は、本郷キャンパス近くのナガラ図書(http://www.nagara-books.co.jp)などトルコ語図書を扱う書店を通じて購入可能。

(トルコ語)

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