教養学部報
第662号
辞典案内 2025 ドイツ語
稲葉治朗
[A]初学者向け
初学者向けといっても最低一年間、人によってはそれ以上使うことになるので、収録語数から以下の辞書をお薦めする。いずれも簡単で便利な和独辞典など巻末の付属情報も充実し、新正書法を取り入れている。書店や図書館で現物を開いてみて、どの辞書が一番自分に合っているか(読んでいて楽しそうか、引くのが苦痛にならなそうか)、探ってみてほしい。一語が持つ情報の全体を一目で見渡せることが紙辞書の重要な利点である。(以下、価格は全て税抜き)
(1)「クラウン独和辞典」(第5版、濱川・信岡監修、新田編修主幹、三省堂、2014、1936頁、CD付録つき、4200円)
(2)「アクセス独和辞典」(第4版、在間編集責任、三修社、2021、2176頁、4200円)
(3)「アポロン独和辞典」(第4版、根本他編集、同学社、2022、1864頁、4200円)
(4)「プログレッシブ独和辞典」(第2版、小野寺他編、小学館、2004、1554頁、3800円)
[B]中級以上向け
「学習用」では物足りないと思えるようになった人たちには、以下の辞書はどうだろうか。本格的な勉強には一冊備えておきたい。
(1)「独和大辞典」(第2版、コンパクト版:国松他編、小学館、1999、2882頁、7500円)
(2)「新現代独和辞典」(新装版、シンチンゲル他編、三修社、2008、1744頁、4200円)
[C]独独辞典
学習者用としては以下のものを薦めたい。ドイツ(語圏)とドイツ語に関心のある人には、ぜひ手にとってもらいたい。
(1)Duden Deutsch als Fremdsprache Standardwörterbuch(第3版:Duden, 2018, 1232頁)。約2万語だが丁寧な説明があり、ヨーロッパ言語共通参照枠(B1-C1レベルに対応)も意識した編集になっている。
(2)Langenscheidt Großwörterbuch Deutsch als Fremdsprache(Langenscheidt, 2019, 1342頁, 約12万語)
(3)Duden - Deutsche Sprache in 12 Bänden(1. Die deutsche Rechtschreibung, 2. Das Stilwörterbuch, 3. Das Bildwörterbuch, 4. Die Grammatik, 5. Das Fremdwörterbuch, 6. Das Aussprachewörterbuch, 7. Das Herkunftswörterbuch, 8. Das Synonymwörterbuch, 9. Sprachliche Zweifelsfälle, 10. Bedeutungswörterbuch, 11. Redewendungen, 12. Zitate und Aussprüche).これがいわゆる全12巻のDuden。各巻がそれぞれ改訂を重ねているので、最近新版が出た巻もあれば、現行の版が出たのが何年も前というものもある。皆さんが最初に手に取るのは正書法[1]、文法[4]、意味[10]が多いだろうが、絵解き[3]、語源[7]、引用や名言[12]を覗いてみるのも楽しいかもしれない。まずは図書館に行って、お気に入りの巻を見つけてみてはどうだろうか。最近の版はカラフルで、すぐに見つかる。
[D]独英・英独辞典
英語が苦にならない人で、単語の意味を手っ取り早く知りたい場合には独英・英独辞典が便利かもしれない。下記以外にも様々なものがあるので、図書館や洋書屋でめくってみてほしい。
(1)Langenscheidt Taschenwörterbuch Englisch(Langenscheidt, 2016, 1632頁, 約13万語).ただし、他の辞書と同様、学習に際しては単語の意味だけでなく、是非とも使い方まで確認してほしい。
(2)Duden Oxford - Bildwörterbuch Deutsch und Englisch(Duden, 1994).こちらはイラストに対応する単語が英語とドイツ語の両方で書かれており、見て楽しむための参考まで。
[E]電子辞書
どの辞書が中身に採用されているかに注意が必要。例文も載せていない簡易なものは授業に適さないし、電子辞書に入っているというだけで決定版というわけでもない。第二外国語にカードだけで対応する初学者用だけでなく、例えば日本語、英語に加えて、独和も大辞典で和独、独独も水準の高いものを揃えたタイプもある。当然のことながら、紙媒体の辞書とは使用方法、機能ともに異なる。
[F]オンライン辞書
最近はDudenをはじめ、水準の高い独独辞典がネット上にあり、また独英・英独辞典(例えば「LEO Englisch」で検索)も簡単に見つかる。ここでもサイトの選択と使い方が鍵だろう。このようなツールは勉強というより確認のためで、必ずしも初学者用ではないものもあるが、早くそれらを使いこなせるようにドイツ語に馴染んでほしい。
(言語情報科学/ドイツ語)
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