教養学部報
第662号
辞典案内 2025 フランス語
渡邊淳也
フランス語の学習をはじめる段階で、仏和辞典だけはかならず買ってください。一度買えば長く役にたつものです。その意味で、一冊だけ買うとするなら、入門用や初級用と銘打ったものを買う必要はありません(中学生用の英和辞典がもう使えないことを想像してみてください)。当初から学習用、または一般用の辞典を買うのがよいでしょう。つぎのような辞典をおすすめします。
◆ 学習用辞典
①大賀正喜ほか『プログレッシブ仏和辞典』小学館。約3万5000語。類義語の弁別の解説や、図示による解説などが斬新で、充実しています。
②倉方秀憲ほか『プチ・ロワイヤル仏和辞典』旺文社。約4万5000語。紙媒体で購入するとウェブアプリへのアクセス権がつきます。
◆ 一般用辞典
③朝倉季雄ほか『新スタンダード仏和辞典』大修館書店。約6万5000語。改版されていませんが、訳語が精確で堅牢です。
④田村毅ほか『ロワイヤル仏和中辞典』旺文社。約9万語。残念ながら紙媒体は絶版ですが、⑦および⑧が出ています。
◆ 大辞典
⑤大辞典編集委員会『小学館ロベール仏和大辞典』小学館。約十二万語。
◆ ウェブアプリ版
⑥大辞典編集委員会『小学館ロベール仏和大辞典』物書堂。
⑦田村毅ほか『ロワイヤル仏和中辞典』旺文社学びストア。
◆ 電子辞書
⑧CASIO XD-SX7200(フランス語モデル)カシオ。『プチ・ロワイヤル仏和辞典』、『ロワイヤル仏和中辞典』、『小学館ロベール仏和大辞典』などを採録。
電子辞書については、⑧が仏和辞典としては最大の『小学館ロベール仏和大辞典』まで採録しているという利点がありますが、画面が小さいため一覧性にとぼしく、記事の長い単語をスクロールしながら読むのは至難のわざです。とくにフランス語にはたいへん意味の幅が広い多義語が多く、そのような単語ほど重要な語彙です。そんな単語を引くとき、全体を見わたして見通しをつけやすいのは、やはり紙媒体の辞書です。ウェブアプリ版の辞書を(スマートフォンからではなく)パソコンからひらくなら、この欠点は若干軽減されますが、一覧性はなお紙媒体に劣るうえ、紙媒体の辞書であれば近隣にある派生語も語義説明込みで目にはいるという利点もあります。このため、かりに電子辞書やウェブアプリを使うにしても、学習のためには紙媒体の辞書も併用することを強くおすすめします。
また、フランス語(圏)に関係の深い分野を専門にしたいと思うひとは、複数の辞書を引きくらべることも勉強になります。辞書にも意外と、それぞれに個性があります。
最後に、仏仏辞典としては、フランスの国家事業として編纂され、紙媒体では1971年から1994年にかけて16巻にわたって順次刊行された ⑨Trésor de la langue françaiseのウェブ版である、⑩TLFi(http://atilf.atilf.fr/)が無料で公開されていますので、意欲のあるひとはぜひ開いてみてください。
(言語情報科学/フランス語・イタリア語)
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