HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報665号(2025年7月 1日)

教養学部報

第665号 外部公開

<時に沿って> お世話になった駒場で

吉池佑里

image665-04-1.jpg 今年度より、大学院総合文化研究科広域科学専攻 生命環境科学系に助教として着任いたしました、吉池佑里と申します。二〇二五年三月に博士号を取得した駒場キャンパスで、引き続き研究活動に従事できることを大変光栄に感じるとともに、めぐりあわせの不思議さを感じております。

 小学生のころから勉強は決して得意ではありませんでしたが、新しいことを学ぶことそのものには強く惹かれてきました。たとえば、小学校高学年で理科の授業が始まったときや、高校で生物を学び始めたときのわくわく感は今でも印象に残っています。ただ、当時の私は、まさか自分が博士課程まで進学し、研究者として一つの学問に取り組むようになるとは思ってもいませんでした。

 大学三年生、修士課程、博士課程の各段階で、民間企業への就職を考えたこともありました。しかしそのたびに、「もう少しだけ研究を続けてみたい」という気持ちが勝り、結果的に研究者としての道を選び続けてきました。こうして研究活動を諦めずに続けてこられたのは、何よりもこれまで出会った多くの方々の支えがあったからにほかなりません。
特に印象的だった出来事として、博士課程三年次に経験したデンマーク・コペンハーゲン大学への短期留学があります。これまで海外での生活経験がほとんどなかった私にとって、異なる文化や研究環境のなかで研究に取り組む経験は非常に刺激的で、多くの気づきと自信をもたらしてくれました。世界では多様で興味深い研究が行われていることを感じると同時に、自分自身の研究も「面白い」と思ってもらえるような、魅力ある研究者になりたいという思いが強まりました。

 私の専門は内分泌生理学です。唾液や汗のように体外に分泌される外分泌に対して、内分泌とは体内、特に血液中に分泌されるホルモンが引き起こすさまざまな生理現象を扱う分野です。ヒトが空腹を感じたり、眠気を覚えたりするのも、体内のさまざまなホルモンの相互作用によるものです。しかし、ホルモンの分泌がどのように制御されているのか、分泌されたホルモンがヒトの情動にどのように関わっているのか、その全体像は未だ十分に解明されていません。

 駒場で過ごすこれからの数年間は、自らの専門分野にしっかりと根を下ろし、生命現象の複雑さと面白さを感じながら、基礎研究の重要性を次世代に伝える努力もしていきたいです。研究を通じて得られる発見の喜びや、多くの失敗の経験の大切さを、学生の皆さまと共有しながら成長していければと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。

(生命環境科学/生物)

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