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前期課程の概要

前期課程におけるリベラルアーツ教育

東京大学の教育課程には、前期課程と後期課程とがあります。本学に入学した学生は、駒場キャンパスにおいて前期課程を過ごしたのちに、後期課程諸学部に進んで専門教育を受けます。この前期課程における教育の核となるのが、リベラルアーツ(Liberal Arts)教育です。

このリベラルアーツ教育は、大学入学時点の限られた知識・経験・思考の限界から、学生を文字通り解放(liberate)して、ありきたりの固定観念や先入観から自由で、他者の説を無自覚に受け売りしない、本当の意味で独立した思考の持ち主とするために行われるものです。そこで前期課程では、学生が特定の学問領域に偏ることなく社会・人文・自然を幅広く学び、自らの思考を理路整然と自在に展開できる能力を培うことに、その教育の重点を置いています。

東京大学では、学生が入学時点の限られた判断力に基づいて専門分野を決定するのではなく、まずは駒場キャンパスにおいて前期課程のリベラルアーツ教育を十分に受けたうえで、進学先の後期課程を主体的に選ぶことを尊重する「Late Specialization(遅い専門化)」を教育の基本方針としてきましたが、それは上記の理由によるものです。

これまで東京大学は、前期課程教育の活性化に継続的に取り組んできました。近年の例を挙げるならば、世界から優秀な人材の集うグローバル・キャンパスを形成し、構成員の多様化を通じて学生の視野を広く世界に拡大するという計画を具現化するものとして、2012年10月には英語プログラムPEAK(Programs in English at Komaba)がスタートしました。また、英語教育の充実のために、学術的な文章作成能力が身につく少人数授業として、理科生向けのALESS(Active Learning of English for Science Students)と文科生向けのALESA(Active Learning of English for Students of the Arts)が、それぞれ2008年度、2013年度から開講されています。さらに、英語で論理的かつ流暢に議論ができるようなスピーキング力の涵養を企図したFLOW(Fluency-Oriented Workshop)を2015年度から開講しています。

駒場における前期課程教育は、全学的な協力体制の下に実施されています。前期課程での学びの特長としては、右に説明するとおり、初年次ゼミナールなどにおける少人数教育の推進、習熟度別教育の展開、さらに前期課程の基礎科目と後期課程の専門科目とを架橋する展開科目(社会・人文・自然科学・文理融合ゼミナール)が挙げられます。また、多彩な講義が開講されている「総合科目」や「主題科目」は、学生が主体的に選択して履修できるように工夫されています。

学習環境の整備にも、東京大学は力を入れてきました。2006年度には、舞台芸術や音楽実習のための演習室、課外活動のための施設を備えた「駒場コミュニケーション・プラザ」が開館し、2014年度にはICT(Information and Communication Technology)を駆使して能動的な学習を行うスタジオ教室群を擁した21世紀型の教育棟21 KOMCEE(21 Komaba Center for Educational Excellence)も完成しました。

学びの特長

どの分野でも通用する「基礎力」を身につける

前期課程では、学問的なものの見方や考え方の基本を学び、将来、どんな分野に進んでも通用する基礎力を身につけるために、「基礎科目」と呼ばれる必修科目があります。大学における学問への導入の役割を果たすのが、入学直後から履修する初年次ゼミナール文科、初年次ゼミナール理科です。それから、文科生・理科生を問わず、外国語、情報、身体運動・健康科学実習が必修となっています。これらの科目の履修を通じて、異文化を理解し、対等に学び合える力、グローバル化する社会をリードする行動力・判断力を養います。それらに加えて、文科では、現代の人文科学・社会科学の基礎となるパラダイムや技法を、理科では、数理科学・物質科学・生命科学の幅広い基礎学力を修得できる授業科目を開講しています。

分野を横断した学習によって総合的な「理解力」を獲得する

教養教育の重要な目的のひとつは、広い観点から学問の広がりと奥行きを理解し、特定の専門分野にかたよらない総合的な視点や柔軟な理解力を獲得することです。そのために開講される「総合科目」では、「言語・コミュニケーション」、「思想・芸術」、「国際・地域」、「社会・制度」、「人間・環境」、「物質・生命」、「数理・情報」の7系列にわたって、多数の講義が用意されています。

その他にも、社会的課題や学際的テーマを多面的に掘り下げる講義や、体験を通じて学ぶことができる少人数クラスなど、多くの学習機会が提供されています。これらは「主題科目」と呼ばれ、学生が自由に履修できる「学術フロンティア講義」、「全学自由研究ゼミナール」、「全学体験ゼミナール」、「国際研修」があります。自らの問題意識に基づいて履修するゼミナールは、学生の満足度が最も高い科目となっています。

少人数で学ぶ、習熟度別に学ぶ

文理を問わず、それぞれの学問領域における思考様式を身につけるうえで大切なのは、一つの問いについて多様な見解が競合することを意識しながら、各自が議論に加わり、その議論を通じて特定の問題についての理解を深めるという経験です。そのために前期課程では、1年次前半に開講される文理別の基礎科目の初年次ゼミナール、さらに前期課程の基礎科目と後期課程の専門科目を架橋する展開科目の社会・人文・自然科学・文理融合ゼミナールなど充実した少人数授業を整備しています。
また前期課程では、習熟度別の授業を展開している科目もあります。個々の学生にとっては、その学力・意欲等に応じて授業を選択することによって、何を、どこまで学ぶかを主体的に選択することが可能です。

21KOMCEEで学びのスタイルを変える

東京大学に入学する皆さんにとって、教養学部で過ごす2年間は、自らの学びを「学習」から「学問」へと変えていくための期間と言えます。将来どのような専門分野に進むかを決めるだけでなく、自分の学びのスタイルを確立する大切な時期です。駒場キャンパスは、そんな学びの支援にも工夫を凝らしています。

2011年度に竣工した21 KOMCEE Westは、能動的・活動的な学びである「アクティブラーニング」の環境を提供します。この新しい教育棟には、討論や発表、協調学習や身体表現の授業に適したスタジオ教室、学生と学生、学生と教員との交流を促すオープンスペース、レクチャーホールやカフェテリアが配置されています。2014年度に竣工した21 KOMCEE Eastは、実験室、教養教育実験スペース、講義室で構成されています。WestとEastを組み合わせることにより、授業と実験、そしてディスカッションが一連の空間で実施可能であり、学生の主体的な学びにつながると期待されています。

きめ細かな学習支援でキャンパス生活を充実させる

教養学部1、2年生の学生数は約6,600人、教員数は約490人です(2023年5月現在)。教員1人当たりの学生数は、教育の充実度合いを示す目安の一つですが、この比率が20以下の大学は世界でもあまり多くはありません。また、多くの授業で、大学院生がティーチング・アシスタント(TA)を務め、授業を補助しています。

これに加えて、教養学部では、学生相談所や進学情報センターを設置し、きめ細かく学習を支援する態勢を整えています。生活上の悩みや学習・進路に関する相談、進学先を考える機会となるシンポジウム等も実施しています。また、新入生に対する特別の初年次プログラムを用意するなど、活発な学習支援を行っています。

自分の適性に合った進路を選択する

東京大学は、文科・理科それぞれ3つの科類に入学者を受け入れます。学生は、前期課程を修了した後に、各人の適性や志望に応じて10学部にわたる44(予定)の後期課程諸学科等に進学します。

前期課程での学習と自己形成の結果として進学先を決めるしくみは、Late Specializationという理念に基づく本学教育制度における大きな特徴です。本学の調査によると、東大を志望した動機は「入学後に進路を選べるから」と答えた学生が多く、この制度は学生の間でも幅広い支持を得ています。

3,4年生ではさらに進んだリベラルアーツ教育を受けることができます。

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