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最終更新日:2024.03.26

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受賞・書籍刊行等 2022.05.02

【受勲】総合文化研究科・教養学部の山下晋司名誉教授に瑞宝中綬章

このたび、総合文化研究科・教養学部 超域文化科学専攻(文化人類学コース)の山下晋司名誉教授が、長年にわたる卓抜した研究と教育のご功績が認められ、令和4年春の叙勲において瑞宝中綬章を受章されました。

山下先生は、本学教養学部教養学科文化人類学分科を卒業した後、東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻で修士号と博士号を取得されました。東京都立大学、広島大学を経て、1989年に本学教養学部にご着任、その後ほぼ四半世紀にわたり、本学大学院総合文化研究科・教養学部文化人類学コースにおいて研究と教育に携わってこられました。2013年3月に本学をご退職後も、2019年3月まで帝京平成大学現代ライフ学部で教鞭をとり続けられました。

山下先生は、博士課程時の長期フィールドワークを基に執筆なされた『儀礼の政治学─インドネシア・トラジャの動態的民族誌』(弘文堂、1988年、民族学振興会第20回澁澤賞受賞)において、現代インドネシアの民族文化の動態を厚い記述により明らかにされました。その後、観光地として世界的に有名な同国バリ島における調査を踏まえ、『バリ─観光人類学のレッスン』(東京大学出版会、1999年)を著され、当時日本では未開拓だった観光人類学の視点から文化生成論を展開されました。

山下先生の学問的業績は、このように文化人類学を骨格としつつ、観光研究、アジア・太平洋地域研究など多方面にわたりますが、2000年代にはさらに移民の人権や多文化主義の問題に関する公共人類学的な研究に着手され、グローバル化に伴う人の移動と文化の動態をめぐる数々の研究を発表してこられました。その達成のひとつである編著『公共人類学』(東京大学出版会、2014年)は、本研究科の「人間の安全保障」プログラムに携わるなかで培われた問題意識を基盤に、教育・医療・人権など現代的諸問題に対し人類学の知見をどのように活かすことができるかを実践的に問うた論集として、アカデミズムの枠を超えた多くの読者を獲得なさいました。

以上のように、山下先生は常に先端的な研究領域を開拓し、国内外の学会を牽引し、同時に優れた後進を育ててこられました。この間、日本民族学会会長(1996~97年度、2004年より日本文化人類学会と改称)、総合観光学会会長(2012~19年度)などの要職を歴任する傍ら、2011年にはNPO法人「人間の安全保障」フォーラムを設立し(2012〜20年度、理事長)、学問を社会的実践として展開することに精力的に取り組んでこられたことも特筆すべきでしょう。

受賞歴には、上述の澁澤賞のほか、第5回日本文化人類学会賞(2010年)などがあり、2012年秋には紫綬褒章を授与されています。
このたび、山下晋司名誉教授が新たに瑞宝中綬章を受章なさいましたことを心よりお祝いいたします。

大学院総合文化研究科・教養学部 教授 津田浩司

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