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最終更新日:2024.03.26

ニュース

イベント 2021.05.20

「グローバル化時代の『人間』を考える-歴史人類学からの視点

区分

研究会等

対象者 社会人・一般 ・ 在学生  教職員
開催日時

2020/6/15 14:55 ~ 16:40

開催場所

その他学内/学外

会場

Zoomにて開催(リンクは申込後に送信)
聴講希望者はhttps://bit.ly/3hFZUNlに必要事項をご入力ください。

参加費

無料

申込方法

要事前申込み

申込受付期間

2021/5/20~2021/6//15

本文

グローバル・スタディーズ・セミナーのご案内


東京大学グローバル地域研究機構(IAGS)では、「グローバル・スタディーズの課題」シリーズ第14回を下記のとおりWeb上にて開催いたします。アクセス詳細は聴講希望者にお知らせします。希望者はhttps://bit.ly/3hFZUNlに必要事項をご入力ください。


日時: 2021年6月15日(火)14:55-16:40
場所: Zoom Webinar
スピーカー: 田辺明生
大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻・教授


タイトル: 「グローバル化時代の『人間』を考える-歴史人類学からの視点」


要旨:本報告では自分自身の研究を振り返りながら、グローバル化時代の「人間」のありかたを考えたい。「人間」が問いの中心に置かれるのは、私の専攻する人類学において「人間とは何か」が中心的な問いであるというだけではなく、この問いにいかに答えるかが、これからの地球社会そしてグローバル・スタディーズのありかたを考える上で決定的に重要だからである。
 インドの人類学を専攻した私がまずとりくんだのは、平等な個人の集合からなる西洋社会に対して、インド社会は階層的なカーストの集合からなるというオリエンタリズム的なインド観の克服であった。それは植民地的な認識や実践からの脱却というポストコロニアルの課題でもあったが、学問的な潮流はいつしか現地社会のことよりも支配側・書く側の権力や認識のほうへ関心を向けるようになった。私はその潮流から距離を置き、あくまでフィールドを重視して、長期的なミクロヒストリーに専心するようになった。そこで見えてきたのは、多様性の出会うコンタクトゾーンとしての南アジアの姿であり、さまざまな人間が他の人間たちそして自然環境とつながりながら地域固有の集合的な生のかたちをつくっていくありさまであった。インドのカーストは、差別や格差というネガティヴな側面をもつ一方、多様性を維持するための社会的な仕組みであることもわかってきた。南アジア型発展径路における「多様性の統合と展開」という観点からみると、南アジア史は、多様な人ともののより有機的なつながりが漸次的に進展し、それと並行した国家社会の構造的な複雑化がすすんできた過程としてみることができる。世界の発展径路については、これまで、資本集約的に効率性を追求する西洋型径路と、共同体的な協力による労働集約的な東アジア型径路が論じられてきた。これに対して、南アジア型発展径路を考えることは、より多くを生産するために人間はいかなる社会をつくってきたのかという従来の問いに代えて、人間はいかに多様なる他者の存在を歓びと豊かさの源とできるのかという、おそらくはより重要な問いを世界史研究にもたらしてくれるものであるように思われる。
 研究を進めるなかで、わたしは、既存の研究枠組における人間観を刷新する必要を感じるようになっていった。こうした思考を支えてくれたのが生存基盤論そして比較存在論であった。人間の生を人間圏・生命圏・地球圏の三つの視点からとらえる生存基盤論の視点は、フィールドで実感した、人間も自然も含む「多様性のつながり」のなかの生のありかたを理解する上で有用であった。またある地域の人間が自己と世界と彼方の関係をいかに認識し,いかに自らの存在を構築しようとしてきたのか、について考察する比較存在論は、生の価値は、単なる理念や信仰の問題ではなく、人間・生きもの・もの・みえないものの総体的なつながりをいかにつくるか、という今ここの生き方に関わる問題であり、その可能性はさまざまに開かれてあることを感得させてくれた。
 グローバル化は、世界の各地域を緊密に結びつけるだけでなく、人間と人間ならざるものの相互作用をより密接にしており、そこから地球温暖化やコロナ・パンデミックなどの問題も生まれている。そのなかで決定的に重要なのは、人間が社会や世界をいかに統御するかではなく、さまざまな人間と人間ならざるものがともにありうる関係をどのようにつくっていくかという問いであろう。そのなかで、人間は、自律的な判断力を持って物事を決定するhuman being ではなく、周囲とのつながりのなかで環境とともに生成変化していくhuman co-becoming である、と考える視角が重要になってくるのではなかろうか。こうした人間観の転換は、人間が生きる世界・地球・惑星・この世たる「グローブ」観の転換、ひいてはグローバル・スタディーズの再定義をもたらすものではないかと考えている。



司会: 伊達聖伸(総合文化研究科 地域文化研究専攻)

討論者:吉国浩哉(総合文化研究科 言語情報科学専攻)
國分功一郎(総合文化研究科 超域文化科学専攻)
馬路智仁(総合文化研究科 国際社会科学専攻)

言語:日本語


アクセス詳細:聴講希望者はhttps://bit.ly/3hFZUNlに必要事項をご入力ください。
HP:https://www.gsi.c.u-tokyo.ac.jp/news/stec_event/3335/
問い合わせ先: グローバル・スタディーズ・イニシアティヴ(GSI)事務局(contact*gsi.c.u-tokyo.ac.jp)
※メールを送信する際は、*を半角@マークに変更してください。

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関連URL

https://www.gsi.c.u-tokyo.ac.jp/

お問合せ先

グローバル・スタディーズ・イニシアティヴ(GSI)事務局(contactgsi.c.u-tokyo.ac.jp)
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