HOME総合情報ニューストピックス

最終更新日:2024.03.26

ニュース

トピックス 2013.12.26

【研究発表】東京大学駒場キャンパス内で新種のカメムシを発見

1.発表者

伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
石川 忠(東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員)
安永 智秀(アメリカ自然史博物館 特別研究員)

2.発表のポイント:

◆東京大学駒場キャンパスで採集したカメムシが、新種であることが明らかになった。
◆東京の都心部に位置する駒場キャンパスには、新種を含む100種以上のカメムシ類が生息していることが分かった。
◆駒場キャンパスは生物多様性に富んだ豊かな自然環境を持つことが改めて確認された。

3.発表概要

東京大学大学院総合文化研究科の石川忠特任研究員、同研究科の伊藤元己教授、アメリカ自然史博物館の安永智秀特別研究員の研究グループは、東京大学駒場キャンパス内で、未知のカメムシ(写真)を発見した。

このカメムシはカスミカメムシ科の一種であり、アカメガシワ(注1)に訪花していたところを石川特任研究員により採集された。詳細な研究の結果、これまで知られていない新種であることが明らかとなり、駒場キャンパスで得られたことに因んで「Sejanus komabanus」という学名が付けられた。また、和名は「エドクロツヤチビカスミカメ」とされた。新種の発見に加え、石川特任研究員の調査によると東京大学駒場キャンパスでは100種以上のカメムシ類の生息が確認されている。このカメムシ類の多様性は、都心部では皇居に匹敵するほど高く、駒場キャンパスが良好な自然環境を保っていることを示している。

本研究により発見された新種のカメムシは、12月20日発行のオランダ昆虫学会誌Tijdschrift voor Entomologie の第156巻に掲載された。

4.発表内容

近年、全地球規模で生物多様性の劣化が問題となってきており、生物多様性条約が締結されて国際的な対応が検討されている。東京の都心部などの都市部では、元来の自然はわずかにしか残されていないが、その生物相(注2)さえ完全には把握されておらず、その解明は都市における生物多様性の問題を語るためには欠かせない。

東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区)の生物相を明らかにする研究活動の一環として、東京大学大学院総合文化研究科の石川忠特任研究員らの研究グループは、1年間に亘りキャンパス内のカメムシ類を採集し、その全容を明らかにしようと活動してきた。その過程において、初夏にアカメガシワの花に訪花していた昆虫を採集した試料の中から、採集された未知のカメムシ(カスミカメ類)が見つかった。このカメムシをカスミカメ類の専門家であるアメリカ自然史博物館の安永智秀特別研究員との共同研究により外部および内部形態を詳細に調査し、既知の近縁種と比較したところ、これまで報告されたことのない新種であることが明らかになった。この新種のカメムシは「エドクロツヤチビカスミカメ」という和名がつけられ、国際的に通用する学名としては、駒場キャンパスで得られたことにちなんで「Sejanus komabanus(セジャヌス・コマバヌス)」と命名された。現在のところ、この新種カメムシは駒場キャンパス以外での生息は確認されていない。

新種の発見に加え、研究グループでは東京大学駒場キャンパス内でこれまでに114種のカメムシ類の生息を確認した。先行の東京都心部の緑地での調査では、皇居で127種、明治神宮で87種のカメムシ類の生息が国立科学博物館および石川特任研究員らの研究グループにより報告されている。この東京大学駒場キャンパスにおけるカメムシ類の多様性は、広大な面積の皇居に匹敵するほど高いことが示され、駒場キャンパスが現在も良好な自然環境を保っていることを示すものである。

なお新種の発見は、同時期に長崎県から発見されたやはりカスミカメ類の新種と共に、石川忠特任研究員、伊藤元己教授、安永智秀特別研究員の共著論文として、12月20日発行のオランダ昆虫学会誌「Tijdschrift voor Entomologie」 の第156巻に掲載された。

5.発表雑誌

雑誌名:「Tijdschrift voor Entomologie 156 (2013) 151–160.」

論文タイトル:
Two new species of the plant bug genus Sejanus Distant from Japan (Heteroptera: Miridae: Phylinae: Leucophoropterini), inhabiting urbanized environments or gardens.

著者:Tomohide Yasunaga, Tadashi Ishikawa & Motomi Ito

DOI:10.1163/22119434-00002025

アブストラクトURL:
http://booksandjournals.brillonline.com/content/journals/10.1163/22119434-00002025;jsessionid=vxosjn7eoijh.x-brill-live-02

6.問い合わせ先

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授
伊藤 元己(いとう もとみ)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/research/faculty/list/mds/mds-gss/f002628.html

7.用語解説

(注1)アカメガシワ
二次林や空き地などに多い木本植物。アカメガシワの葉は、カシワの葉と同様に、食物をのせるために用いられる。名前は新葉が赤いことに由来している。

(注2)生物相
特定の地域や時代などに生活しているすべての生物の種類。

8.添付資料

20131226-kamemushi.png
写真:発見された新種のカメムシ「エドクロツヤチビカスミカメ」
写真は以下のURLからダウンロードできます。
http://foj.c.u-tokyo.ac.jp/download/bug.jpg

前のページへ戻る

総合情報