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最終更新日:2024.03.26

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トピックス 2022.07.12

【研究成果】変換効率26.2%のペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池を実現

発表者

瀬川 浩司(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 教授)
別所 毅隆(東京大学 先端科学技術研究センター 附属産学連携新エネルギー研究施設 特任講師)
多田 圭志(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 学術専門職員)
中村 元志(東京大学 大学院工学系研究科 先端学際工学専攻 博士課程(研究当時))

発表のポイント

  • ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池として世界最高性能となる変換効率26.2%を達成。
  • タンデム太陽電池のトップセルに使う半透明ペロブスカイト太陽電池の性能を劇的に高め、変換効率19.5%を実現できたことが要因。
  • 本研究を発展させ、30%を超える高い変換効率を示す軽量フレキシブル太陽電池を実現できる可能性があり、ビル壁面、電動航空機、ドローンなどへの利用が期待される。

発表内容

 ペロブスカイト太陽電池(注1)は、塗布製造できる安価な太陽電池でありながら、単結晶シリコン太陽電池に匹敵する高い変換効率を示し、軽量フィルム基板にも形成できることから次世代の高性能な軽量フレキシブル太陽電池として世界中で開発競争が進められています。

 ペロブスカイト太陽電池の現状での世界最高効率は25%台ですが、電動航空機、電気自動車、ドローンなどへの用途拡大を目指すには、軽量フレキシブル太陽電池で30%台の変換効率を実現する必要があります。これを実現するためには、CIGS太陽電池(注2)など、既存の軽量フレキシブル太陽電池と組み合わせたタンデム太陽電池(注3)とする方法が考えられます。

 東京大学大学院総合文化研究科の瀬川教授らの研究グループは、太陽電池の変換効率の飛躍的向上が期待できるペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたメカニカルスタックタンデム太陽電池の研究を進めてきました。有機金属ハライドペロブスカイトとCIGSは、いずれも高い光吸収性能を有し、従来のSi太陽電池の100分の1程度の膜厚で製造可能で、軽量フレキシブル化も容易です。

 ペロブスカイト太陽電池を、タンデム太陽電池に用いるためには、従来の金属電極を、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電層に置き換える必要があります。本研究では、ペロブスカイト層にダメージを与えずに高性能なITOを積層する手法を開発し、高い性能を維持した状態で半透明なペロブスカイト太陽電池を作成することに成功し、半透明ペロブスカイト太陽電池としては世界最高性能となる変換効率19.5%を達成しました。

 この高効率な半透明ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせる事で、26.2%の変換効率を有するメカニカルスタックタンデム太陽電池を実現しました。

 本研究を発展させ、さらなる変換効率改善の研究を続ける事で、30%を超える軽量フレキシブル太陽電池を実現できる可能性があり、ビル壁面や大面積屋根などの建物設置のほか、電動航空機、電気自動車、ドローンなど高効率化と軽量化が求められる分野での活用や、新しい用途への展開も期待されます。

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図1:ペロブスカイト/CIGSタンデム型太陽電池

発表雑誌

雑誌名:「ACS Applied Energy Materials」(オンライン版:7月8日)
論文タイトル:Semi-Transparent Perovskite Solar Cells for Four-Terminal Perovskite/CIGS Tandem Solar Cells
著者:Motoshi Nakamura, Ching Chang Lin, Chie Nishiyama, Keishi Tada, Takeru Bessho, and Hiroshi Segawa*
DOI番号:10.1021/acsaem.2c00620
アブストラクトURL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaem.2c00620

問い合わせ先

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻
教授 瀬川 浩司(せがわ ひろし)
http://www.dsc.rcast.u-tokyo.ac.jp/

用語解説

(注1)ペロブスカイト太陽電池:
光吸収材料に、「ペロブスカイト」という結晶構造を持つ有機金属ハライド化合物(金属は主に鉛)を用いた太陽電池。簡単な製造方法で高いエネルギー変換効率が得られることから、近年急速に開発が進み、次世代の高性能低コスト型太陽電池の本命として注目を集めている。

(注2)CIGS太陽電池:
光吸収材料に、Ⅰ族であるCu、Ⅲ族であるIn及びGa、Ⅵ族あるSe及びSで構成されたⅠ-Ⅲ-Ⅵ2化合物半導体を用いた太陽電池。一般的なSi太陽電池の100分の1程度の材料で製造可能であり、これまで日本国内において6 GW以上が製造され、世界中で利用されている。

(注3)タンデム太陽電池:
2種類以上の異なる太陽電池を積層した次世代型太陽電池。通常の太陽電池の変換効率の理論的な上限値は33%程度であるのに対し、タンデム型構造にすることで、45%以上の変換効率を実現することが可能となる。本研究では、半透明のペロブスカイト太陽電池トップセルにCIGS太陽電池ボトムセルを物理的に積み重ねた「メカニカルスタック構造」を採用している。

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