HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報544号(2012年1月11日)

教養学部報

第544号 外部公開

21 KOMCEEついに始動!!

永田敬

544-B-1-1-01.jpgこの冬学期から、駒場キャンパス・コミュニケーション・プラザの北西側に新設された教育棟で前期課程の授業が行われています。この建物の正式な名称は「21 Komaba Center for Educational Excellence 」ですが、大抵の人は「 21 KOMCEE 」あるいは、単に「KOMCEE」と略称で呼んでいます(“コムシー”と発音する人が多いようです)。 21 KOMCEE は、建設当時には「理想の教育棟(Ⅰ期棟)」という名称だったことや、人目を引く総ガラスのホールや刻々と色彩が変化する照明などで、竣工前からブログに登場したり、東京大学新聞に取り上げられたりと話題を呼びました。因みに、 21 KOMCEE の“21”は“二十一号館”を意味しているのではなく(第一、駒場キャンパスに十八号館はありますが、十九号館も二十号館もありませんよね)、これまでの大学建物の先を行く“二一世紀型”という意味が込められています。

さて、 21 KOMCEE がどうして「理想の教育棟」と呼ばれていたかについては、それなりの経緯があるのですが、ここではそのお話ではなく、教養学部がどのようなコンセプトで 21 KOMCEE を建設したか、どのように 21 KOMCEE を活用していくか(活用して欲しいか)について述べることにします。

21 KOMCEE を設計する際に、その根底にあったのは「滞在型 の学習空間」というコンセプトでした。これまでの教室建物では、学生の皆さんは授業が始まる直前に建物(=教室)に入り、授業が終われば建物(=教室)か ら出るのが当たり前でした。建物は“教室の集合体”としての機能しか持っておらず(勿論、トイレ・廊下や掲示板等はありますが)、したがって、特に理由が なければ授業以外で建物に滞在する必然性(あるいは、必要性)がなかったのです。

その結果として、授業が終わると大勢の人、人、人……が銀杏並木を西から東へ(=教室棟からコミプラ方向へ)と大移動する光景が駒場名物のひとつになっています。 21 KOMCEE で は、教室群のある三階から五階の廊下に長椅子が置かれた広いスペース(建築用語ではアルコーブと呼ぶそうです)が設けられ、壁面にはホワイトボードが貼ら れています。授業の開始前や終了後も、そこで友達と議論したり、教員に質問したり、自習したりすることが可能です。無線LAN環境も整備されています。地 階には自習やちょっとしたグループワークのためのオープンスペース・アリーナ、落ち着いて話ができるカフェテリアKOMOREBIもあります。 21 KOMCEE が目指したのは、授業時間以外にも滞在でき、図書館やコミュニケーションプラザとはちょっと違った使い方ができるアカデミックな空間です。

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もうひとつのキーワードは「アクティブラーニング」です。 21 KOMCEE の すべての教室には、可動式の机・椅子、壁一面のホワイトボード、議論のまとめや発表に使うディスカッションボードなど、学生の皆さんが能動的 (active)に授業に参加するための環境が整備されています。これらの教室は、普通の教室環境と違うという意味で「スタジオ教室」と呼ばれています。 スタジオ教室の廊下側の壁は全面ガラスになっています。たとえ履修していない授業でも、通りすがりにのぞいて「あっ、面白そう!」という事が起こるかもし れませんね。

 積極的に授業をのぞいてみることが可能なスタジオ教室もあります。一階北側にある一〇一教室は、身体運動・身体表現・身体計測を採り入れた授業のため に、体育館並みのフローリング仕上げの床になっていますが、二階には観覧用のキャットウォークが設けられています。アクティブラーニングのコンセプトは、 地階に設けられた二百名収容のレクチャーホールにも反映されています。講義形式の授業や講演会でも、講師と聴衆の距離が近く、お互いの緊張感が伝わるよう な工夫が為されています。

 学生の皆さんがアクティブに活動する対象は、必ずしも授業に限らないでしょう。ガラス張り三層吹き抜けのMMホールは、通りすがりの人が思わず引き付け られるような、音楽演奏や演芸などのパフォーマンス、演説やトークイベントなど、毎日のように何か面白いことが起こっている活動的な空間を想定して設計さ れました。残念ながら、現状では未だそのようには使われていませんが、今後「さすがは駒場!」と唸るような学生イベントが繰り広げられることを期待してい ます。

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さらにもうひとつ付け加えなければならないキーワードが「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」です。サステイナブルキャンパスの実現を目指す東京大学の新たな試みとして、 21 KOMCEE に は最先端のZEB技術が結集されています。例えば、地熱・自然換気を利用した空調設備、LED照明、人工知能による建物制御システム「学ぶクン」など、枚 挙に暇がありません。学生の皆さんには、ZEB環境を通してサステイナビリティや低炭素社会の問題を身近に捉えて欲しいのです。

 2011年9月末に開催された 21 KOMCEE の竣工披露式で、来賓の偉い方々が口を揃えて仰ったのは「建物は確かに立派だ。問題はこれをどう使いこなすかだ!」でした。この言葉は、駒場の(もしかすると全学の)教職員・学生全てに投げ掛けられたものではないでしょうか。皆さんで 21 KOMCEE をとことん活用しましょう。

 最後にひと言。 21 KOMCEE の建設は多くの方々のご尽力によって実現しました。ここではそれぞれのお名前を挙げる事はしませんが、 21 KOMCEE を活用することこそが、感謝の念を表すのに最も相応しいことだと思います。冒頭に述べた名称の由来を始めとして、 21 KOMCEE の萌芽が生まれ、建物として出来上がるまでの六年間には、数々の秘話(と言っていいかな?)があります。それらは何れ別の機会にご紹介することにしましょう。

 21 KOMCEE 公式ホームページ http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/facilities/foreducation/index.html#21komcee

(副学部長/相関基礎科学系/化学)

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