教養学部報
第573号
駒場博物館案内
伊藤元己
駒場キャンパスの正門を入ると、時計台のある一号館前ロータリーを右に回り込んだ奥、大きなヒマラヤスギの後ろに、美しい正面を持った建物が立っています。それが駒場博物館です。もし巨木によって視界が遮られていなければ、九〇〇番教室のファサードと一対をなす駒場Ⅰキャンパスの正面の景観を決定づける重要な建物であることがもっとよく分かるはずです。
この建物は、昭和初期に教養学部の前身である旧制第一高等学校の図書館として建てられた由緒あるものです。戦後は、教養学部図書館や教務課、美術博物館展示室として使われてきましたが、二〇〇三年に全面的な改修が行われ、現在の博物館施設が完成しました。
駒場博物館は、美術博物館と自然科学博物館という二つの博物館で構成されています。
美術博物館は、初代教養学部長・矢内原忠雄教授の掲げた文理横断型総合教育構想の一環として一九五一年に発足しました。最初は展示スペースもありませんでしたが、十年にわたり資料蒐集が行われ、一九六一年、旧第二本館内に展示室が開設されました。現在の建物の二階に移転したのは一九七一年のことです。以来、定期的に展覧会や、講演会を開催してきました。
一方、自然科学博物館は、一九五三年に、総合文化研究科の自然科学系の教官をメンバーとする 自然科学博物館委員会によって設置されました。かつては展示室を持たなかったため、年一回、駒場祭に合わせて資料を公開し、その他、講演会を定期的に開催する等の、地道な教育活動を続けてきました。
二〇〇三年秋、現在の建物の改修が完了したことをうけ、自然科学博物館もこの建物に移転し、長年にわたり独自の活動を行ってきた二つの博物館がはじめて同じ場所で活動することになりました。
二〇一五年度は、春に、特別展「建築・生命・ダンス─IHS教育プロジェクト『生命のかたち』プレゼンテーション」展と特別展「會舘の時代:中之島に華開いたモダニズムとその後」展(共に会期:三月七日〜四月五日)、その後、特別展「顕微鏡絵画(仮称)」(会期:四月二五日から六月二八日)を開催いたします。
夏には、特別展「旧制一高理科実験機器(仮称)」(会期:七月中旬〜九月中旬)、秋は、特別展「狩野亨吉生誕百五十周年(仮題)」(会期:一〇月中旬〜一二月上旬)を開催する予定です。詳細はホームページをご覧ください。
駒場博物館は、一般公開を原則としており、学内外の方々に気軽に訪れていただきたいと考えています。学生と教職員の皆さんが授業や研究や仕事の合間に気楽に立ち寄り、教養学部でしかえられない教養獲得とやすらぎの場として活用してくださることをなにより期待します。今後も、駒場キャンパス内で行われている多様な研究を発信する場として、また広範な教育の場として機能するよう、環境を整えてゆく所存です。
http://museum.c.u-tokyo.ac.jp/index.html
(駒場博物館館長)
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