HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報582号(2016年4月 1日)

教養学部報

第582号 外部公開

アメリカ太平洋地域研究センター(CPAS)

西崎文子・橋川健竜

http://www.cpas.c.u-tokyo.ac.jp

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。駒場キャンパスの研究教育施設を活用し、柔軟な視野から、さまざまな問題を深く考える経験を積んでもらいたいと願っています。それを支援する組織の一つとして、アメリカ太平洋地域研究センター(CPAS)を紹介します。駒場キャンパスの中央を走る銀杏並木の西端近く、十四号館に接続する二階建ての建物にそのセンターはあります。

このセンターは、北米とオセアニア地域に焦点をあてながら、アメリカ太平洋地域の政治、経済、文化を研究する専門組織です。アメリカ合衆国に関する国立大学唯一の研究機関として一九六七年に設立され、本年度は四九年目に入ります。近年は合衆国の政治や文化だけでなく、中南米やアジア太平洋の諸国と合衆国との関係を強く意識しながら、世界に占めるアメリカ文明の意味を捉える研究を数多く展開しています。二〇一〇年にはこのセンターを基盤にグローバル地域研究機構という組織を立ちあげ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの諸地域および人間の安全保障を専門とする学内の研究者に共同研究の場を提供するよう努めています。たとえば昨年は、オーストラリアで撮影されたハリウッド作品『渚にて』(一九五九年)に関するドキュメンタリー映画『フォールアウト』(二〇一三年)のプロデューサーをお招きして上映会とシンポジウムを開催し、研究者の方々とともに、映像文化論と二十世紀後半史の観点から冷戦初期における核戦争の脅威という背景を掘り下げました。

こうしたシンポジウムに参加して耳を傾けるのももちろん楽しいのですが、新入生のみなさんには、定期的に開催しているCPAS公開セミナーに参加して、大学における研究の最前線を味わってみることをお勧めします。このセミナーは、国内外の一流の講師を招き、現在学術の世界で話題になっている問題を自由に討議してもらっています。米欧豪亜の各国からセンターを訪れる研究者が、地域文化研究や国際関係論を志す院生・学部生を交えたオーディエンスと活発な議論を重ねています。昨年は、二十世紀前半のオーストラリアにおける太平洋島嶼社会の理解、アメリカの小規模大学における教育効果増進のための試み、第二次世界大戦末期のアメリカ社会と軍における「戦争疲れ」のあり方など、多様なテーマを取り上げました。ほとんどの場合使用言語は英語ですが、決して流暢でなくても構わないのです。自分の疑問を率直に伝え、納得いくまで話を聞く練習をする、格好の場にセミナーはなっています。学部新入生のみなさんも積極的に挑戦してみてください。

アメリカ太平洋地域に関する情報文献を収集し、全国の研究者や学生に広く公開することも、本センターの重要な活動です。アメリカ合衆国の政治・歴史・文化に関する専門書を中心に七万冊を越える文献を有するセンター図書室は、誰でも自由に利用できます。雑誌も豊富に揃えています。みなさんも学生証さえ見せれば図書を借り出せるので、ぜひ利用してみてください。マイクロフィルム、DVDを含む視聴覚資料も充実しています。休講で時間が空いた時にそれらの資料を眺めてみるのも楽しいでしょう。

現在センターは、南太平洋島嶼諸国やオーストラリアを含むオセアニア地域に関する図書資料を意識的に増やしています。多文化共生の実験の場とも称されるアメリカ太平洋地域の過去と現在を考え、未来を予測する、活発な研究空間へとセンターを育てていきたいのです。詳しくはセンターのホームページ(www.cpas.c.u-tokyo.ac.jp)を見てください。上に紹介したセミナー、シンポジウム、図書室の利用規程他、いろいろな情報が掲載されています。

(グローバル地域研究機構/歴史)
(グローバル地域研究機構/英語)

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