HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報591号(2017年5月 2日)

教養学部報

第591号 外部公開

辞典案内 2017 英語

武田将明

【英和辞典】
まずは、語彙数・解説量ともに最高クラスの英和辞典である1〜3のどれかを手許に置こう。歴史的に様々な言語の影響を受けてきた英語は多彩な語彙を誇り、今日もグローバル化の渦中で変わり続けている。1〜3は、高校までの「やさしい」英語の壁をブチ抜くハンマーであり、天然自然の英語に挑むのに欠かせない装備でもある。ただし嵩も値段もケタ外れなので、電子辞書で購入するのが現実的だろう。比較的軽量ながら情報量(28万語収録)ではどの辞書にも負けない4は、小説から科学論文まであらゆる英語を読むのに重宝する。5は4の別冊で、新語、固有名詞、科学用語を補強してくれる(19万語収録)。6も中辞典サイズながら一冊で36万語収録。これに対し、7は語彙数こそ多くないが(10万2千語)、実用的な英文と訳文にこだわり、レイアウトや説明にも工夫を凝らしている。ただし、6と7は本稿執筆時には品切れの模様。辞書の世界も栄枯盛衰はなはだしいが、他方で8は、1915年に初版が刊行された伝説の辞書の「新版」。英語オタク・日本語オタクの人は、恰好いい例文の訳に魅了されるだろう。翻訳や通訳の現場のデータに基づく9は、アルクのホームページに行けばタダで利用できる(ただし英辞郎on the WEB Proは有料)。急に単語を調べたいとき便利だが、参考程度に使おう。なお、英語関係の辞書については、洋書も多いのですべて税込価格であることを最初に断っておく。
1.新英和大辞典(竹林ほか編・研究社・2002年第6版・19440円)
2.ランダムハウス英和大辞典(小西ほか編・小学館・1993年第2版・15552円)
3.ジーニアス英和大辞典(小西ほか編・大修館・2001年・17820円)
4.リーダーズ英和辞典(高橋ほか編・研究社・2012年第3版・10800円)
5.リーダーズ・プラス(松田ほか編・研究社・2000年・10800円)
6.グランドコンサイス英和辞典(三省堂編修所編・三省堂・2001年・品切れ)
7.ロングマン英和辞典(Leech, 池上ほか編・桐原書店・2007年・品切れ)
8.熟語本位 英和中辞典 新版(斎藤・豊田著・八木校注・2016年・10800円)
9.英辞郎 on the WEB(EDP編・アルク・URLは「英辞郎」で検索)

【英英辞典】
会話や作文で自然な英文を使うには、英英辞典を参照して英単語・熟語の実際的な用法に触れるのが近道。初心者用としては、定義が明快で説明が詳しい10か11。用例を示しつつ定義する形式の12は英作文で力を発揮する。これらはどれも見やすいフルカラー印刷。24万語を収録する13は上級者向け。14は断トツで最大の英語辞典。基本的に古い語義から載っているので単語の歴史が概観できる。たとえば“nice”を引いてみると、もともとの意味はちっともナイスじゃないことが判る。答えを知りたければ覗いてみよう。なお、書誌情報にある“OUP”は“Oxford University Press”の略。本稿執筆時の値段を記したが、洋書の価格はしばしば変動するので参考程度に考えてほしい。
10.Oxford Advanced Learner’s Dictionary(オックスフォード現代英英辞典)(OUP・2015年第9版・CD-ROM付・5796円)
11.Longman Dictionary of Contemporary English(2014年第6版・4289円/オンライン版付・5357円)
12.Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary(2014年第8版・4157円)
13.Concise Oxford English Dictionary(Stevensonほか編・OUP・2011年第12版・3713円)
14.Oxford English Dictionary(OUP・1989年第2版・全20巻/図書館で本の形でもオンラインでも参照できる。CD-ROM版(25000円くらい)もある)

【和英辞典】
和英辞典を引くにはコツがいる。書きたい内容とピッタリ合う英語表現を見つけるには、例文に注意し、なるべく英和・英英辞典も参照しよう。48万項目を掲載する15は質量ともに最高峰の和英辞典だが、電子辞書に入っていないと持ち運びは難しい。中辞典クラスでは16が項目数(9万3千)、引きやすさともに優れている。
15.新和英大辞典(渡邊ほか編・研究社・2003年第5版・19440円)
16.小学館プログレッシブ和英中辞典(近藤ほか編・小学館・2011年第4版・3780円)

【類語・連語辞典など】
英文を書いていて、「この名詞と前置詞の組み合わせ、意味は通じそうだけど本当にあるのかな?」と思うことはないだろうか。そんなとき、ネットで「Google先生」にお訊ねするのもいいけれど、17〜19の辞書で確認できればさらに安心だ。どれも英単語の組み合わせの具体例を示してくれる。堂々38万用例掲載の17には例文の和訳もつく。18は英語のみだがよりコンパクト。2015年に用例を絞って和訳を付した日本語版も登場した。19はThe BBI Dictionary of English Word Combinations(John Benjamins)の日本語版。やや古いが(英語では新版が出ている)、独自に例文を追加しているし、巻末の日本語索引も便利だ。英作文初心者にありがちな同じ表現の繰り返しを避け、大人の英文を書くために必要なのが類語辞典(thesaurus)。標準的なのは30万語収録の20。21はこの類似品だが現役作家のエッセイや類似語のニュアンスの差を示す表などのオマケつき。また、たとえば“sexy”を引くと20では“She’s so sexy”という例文が載っているのに、21では“He’s so sexy”とアメリカ仕様(?)になっている。これらはいずれもアルファベット順に単語が並んでいるのに対し、22の特徴は“Birth”, “Body”など概念別に単語が区分されていること。23は学習者用の類語辞典として定評のあるOxford Learner’s Thesaurusを日本語話者向けに再編集したもの。類語数1万は決して多くないが、実用的な工夫があり、類語辞典の入門に適している。24も同じく実用性を重視しつつ、頻出する単語・フレーズの用法を詳述する。固有名詞などの発音を調べたいときには25(CD−ROMで音も確認できる)、文法・語法で悩んだときには(辞書というより文法書だが)26を見てみよう。26の原書は2016年に第4版が登場、従来のアルファベット順の項目配列が廃止された。日本語訳は第3版にもとづく。
17.新編英和活用大辞典(市川ほか編・研究社・1995年・17280円)
18.Oxford Collocations Dictionary(McIntoshほか編・OUP・2009年・CD-ROM付・4113円/日本語版(小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典)、八木ほか編・小学館・2015年・5184円)
19.BBI英和連語活用辞典(寺澤ほか編・丸善・1993年・7340円)
20.Concise Oxford Thesaurus(Hawkerほか編・OUP・2007年第3版・2909円)
21.Oxford American Writer’s Thesaurus(Lindberg編・OUP・2012年第3版・4639円)
22.Roget’s International Thesaurus(Kipfer編・Collins・2011年第7版・品切れ)
23.小学館オックスフォード英語類語辞典(Lea、田中ほか編・小学館・2011年・4824円)
24.Longman Language Activator(ロングマン 英語アクティベータ)(Summers編・Longman・2003年第2版・4536円)
25.Longman Pronunciation Dictionary(Wells編・Longman・2008年第3版・CD-ROM付・5435円)
26.Practical English Usage(Swan編・OUP・2016年第4版・品切れ/日本語版(オックスフォード 実例現代英語用法辞典 第3版)、吉田訳・研究社・2007年・5832円)

【電子辞書について】
電子辞書の機能・容量の進歩たるや怖ろしいもので、たとえば2017年の生協モデルは、上記の1、3、4、5、10、15、17、18に加え、13と20それぞれの拡張版であるOxford Dictionary of English(名前は似ているが14とは全く別物)とOxford Thesaurus of English、さらに24の類似辞書Oxford Lerner’s Wordfinder(オックスフォード英英活用辞典)も収めている。また、タブレット端末やスマホ、Kindleで使える辞書もどんどん増えている。簡便になった分、辞書を引く人間が怠惰になっては無意味なので、せっかくだから同じ単語・フレーズを様々な辞書で調べ、英語という言葉について深く考えてみよう。そこで気に入った辞書があれば、紙の版も買ってみてはどうだろう。本当に好きな曲はあえてレコードで聴くように、愛用の辞書をじっくり読みふけるには、まだまだ紙も捨てがたい。

(言語情報科学/英語)

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