HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報602号(2018年7月 2日)

教養学部報

第602号 外部公開

大隅良典先生ノーベル賞受賞記念碑の建立

村田 滋

二〇一六年のノーベル生理学・医学賞はわが国の大隅良典先生に授与されました。本年の四月二十七日、先生のご受賞を記念するモニュメントが駒場Ⅰキャンパス十五号館前に建てられました。これは、駒場Ⅰキャンパスにおいて世界に誇る研究がなされたことを後世に伝えるとともに、研究の原点ともいえる「観る楽しさ、知る喜び、解く歓び」を大切にする心が駒場の伝統であることを示すものです。

大隅先生は東京大学教養学部基礎科学科(現在は統合自然科学科に改組)のご出身であり、学位取得後、本学理学部の助手・講師を経て、一九八八年に駒場にあった理学系研究科相関理化学専攻の助教授に着任されました。まったく新しいテーマで研究しようと決めていた大隅先生は、酵母の液胞を用いてタンパク質の分解過程の研究に着手され、光学顕微鏡下に「オートファジー」現象を世界で初めて観察することに成功しました。この駒場Ⅰキャンパス三号館の小さな研究室での発見が、ノーベル賞の受賞理由である「オートファジーの仕組みの解明」の出発点になりました。先生の〝人のやらないことをやり、競争をしないで独自のものを出す〟という研究姿勢は、学生時代、および独立した研究者として最初に過ごされた駒場で確立したものと思います。その理念は、現在も統合自然科学科に、また広域科学専攻に受け継がれています。

大隅先生は八年間にわたり駒場で素晴らしい研究成果をあげられるとともに、駒場の教育に尽力されました。先生は理科生に「生物学(一般)」を講義する傍ら、十名程度の学生を対象に「酵母の分子生物学」や「細胞の動的構造」といった題目で全学自由研究ゼミナールを開講されていました。最先端の研究成果が前期課程学生へ還流されると同時に、大隅先生もまた熱心な学生から大いに刺激を受けたことと推察されます。 「観る楽しさ、知る喜び、解く歓び」は、大隅先生が昨年二月に駒場Ⅰキャンパスで開催されたノーベル賞受賞記念講演会の際に残されたお言葉です。先生のお許しをいただき、ご自筆の文字を写して記念碑に彫り込みました。統合自然科学科や広域科学専攻に所属する教員・学生の多くは、通勤・通学の際にこのモニュメントの前を通ります。ときにこのお言葉に励まされ、また研究を志した頃を思い出し気持ちを新たにすることでしょう。いつの日か、駒場から大隅先生に続く研究者が現れることを願っています。

(平成二十九年度副学部長/ 相関基礎科学/化学)

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