HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報635号(2022年4月 1日)

教養学部報

第635号 外部公開

辞典案内 2022 国語辞典

矢田 勉

 辞典には個性がある。市販されている国語辞典に、全く役に立たないようなものはない代わりに、絶対的というものもない。それぞれの辞典には強みもあれば弱点もあるので、複数のものを座右に備えて引き比べたうえで、自分なりに情報を吟味して使用することが必要である。
 個人で持つべき小型・中型の辞典とは別に、大学生としては是非とも使いこなしたいのが、現在最大の国語辞典、『日本国語大辞典(第二版)』(小学館、全13巻+別巻1、揃210000円)である。駒場図書館はもちろん、学内外の多くの図書館・室に備えてあるし、オンライン版が、学内ネットワークに接続しているPCから利用できる(東京大学附属図書館→Literacy→定番データベース/JapanKnowledge Lib→利用する→ログイン→基本検索。UTokyo Accountで、学外からの利用も可能)。また、3巻に縮約した「精選版」(揃45000円)もあり、こちらには電子辞書版やiOS用アプリ版(8000円)などもある。
 汎用的な国語辞典のほかに、特殊な用途の国語辞典として、方言辞典(『日本方言大辞典』[小学館、全3巻、揃98058円]がJapanKnowledge Libから利用可能)・新語辞典・外来語辞典など各種のものがある。中でも類語辞典(シソーラス)は、上手く使いこなせば表現の幅を広げるのに役立つ。『類語大辞典』(講談社、6500円)、『分類語彙表』(増補改訂版、大日本図書、4700円)など各種のものがある。『角川類語新辞典』(現在品切)はJapanKnowledge Libから利用可能である。
 また、日本古典を読もうとすると、古語辞典が必要となる。大学での学びでは、高校生向けの学習古語辞典ではやはり十分ではない。『日本国語大辞典』は古語辞典の役割も兼ねている(排列は現代仮名遣い順なので注意)。定評のある古語専門辞典には、中型では『小学館古語大辞典』(現在品切)、大型では『角川古語大辞典』(全5巻、JapanKnowledge Libから利用可能)がある。特定の時代の語彙を対象としたものでは、『時代別国語大辞典 上代編』(三省堂、40000円)、『時代別国語大辞典 室町時代編』(三省堂、全5巻、揃213000円)が出色である。『古語大鑑』(東京大学出版会、第1巻38000円、第2巻42000円)は、全4巻のうち既刊はまだ2巻のみであるが、漢語や漢文訓読語なども充実した、特色ある古語辞典である。
 より本格的に古典研究を行おうとすれば、それぞれのテキストが書かれた時代に編まれた辞書を使う必要がある。江戸時代以前に作られた辞書を「古辞書」というが、ここで細かく説明する余裕はない。授業等を通じて触れて欲しい。

(言語情報科学/国文・漢文学)

※辞書の価格について、特に注意書きのないものは税抜きとなります。

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