HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報636号(2022年5月 9日)

教養学部報

第636号 外部公開

〈後期課程案内〉教養学部 統合自然科学科 目移りするほどの「科学」が揃ってます

統合自然科学科長 佐藤 健

https://www.integrated.c.u-tokyo.ac.jp/

 前期課程の皆さんは、進学先を選ぶのにあたり何を重視しますか。純粋に自分の興味でしょうか。学部・学科の人気度でしょうか。あるいは就職を見据えた展望でしょうか。既に自分の将来が見えていて進路を見切っている人も、本当に見えているのかな、と少し疑っても良いかもしれません。また、人はつい人気のあるものに惹かれてしまうものですが、大勢が選択しないから安全ではないという先入観に支配されていないでしょうか。さらに、自分から視野を限定してしまうことで、長い時間を想定した未来までを思い描けず、比較的近い未来の自分に利がある道を選ぼうとしていないでしょうか。子どもは目の前のお菓子を取り合いますが、大人はお菓子を譲ることの利を計算できます。この差は、結局のところ、視野の広さの差にすぎません。広い視野は、社会を生きていくうえで最大の武器となります。これは、広い視野をあたえてくれる環境で培われます。統合自然科学科では自然科学に軸足を置いた五つのコースを設定し、数理、物質、生命、認知、スポーツと多彩な領域をカバーしています。だからといって、広く浅くというわけではなく、各分野における高い専門性と、それらを越境・横断し、統合する力を育む教育の両立を目指し、カリキュラムは複数コースの履修が可能となるよう設計されています。以下に、各コースの特色を簡単に紹介しましょう。

数理自然科学コース
 数学は科学全般に応用をもたらすとともに、逆に科学の多くの分野からは新しい数学的アイデアが生まれます。このような循環・再生が生み出す躍動こそ、数理科学という言葉に込められた期待、可能性といえます。本コースでは、このような意味での数理自然科学を主題として、解析学、力学系、確率論などの科目とともに、物理学、化学、生物学などに関する様々な科目を履修することができます。少人数セミナーも用意され、研究へと展開する道も拓かれています。
物質基礎科学コース
 素粒子、原子から生体にいたる様々な階層における物理学・化学を深く広く学ぶことができます。物理化学、有機化学、無機化学などの伝統的な分野に加え、境界領域、分野横断的な新しい内容を取り入れた科目が用意され、各人の興味、志向に応じた選択肢が広がります。それらの多様な履修により統合的な見識、洞察力を養い、新時代を先導する個性的な人材を育成します。
統合生命科学コース
 生命には分子から細胞、動植物などの個体、更には個体群まで多様な階層や種があります。個々の階層における機能、構造、秩序を把握することは勿論ですが、それらを統合する機構、法則性にも目を向けて生命科学の最前線を開拓できる人材育成を目指します。科目も、生化学、分子生物学、細胞生物学などに加え、生物物理学、脳・神経科学、複雑系生物学、構成的生物学などがあり、多彩な分野の知識、実験手法が学べます。流行に囚われない独創性の高い基礎研究が行われている点も本コースの特徴です。
認知行動科学コース
 元来文系学部で行われてきた心理学の諸問題に対して、理系的つまり実証科学的手法でアプローチするという、世界でもまだ珍しい二十一世紀型の学びの場を提供しています。文科・理科生が半々である特徴を活かし、予備知識の多少によらず心の実証研究の本質が自然にわかるような教育研究を展開します。現代社会に対する視点と実証科学的精神とのバランスがとれた学際性豊かな知識を得ることができます。
スポーツ科学コース(*二〇二二年度まではサブコース)
 本コースでは、さまざまな身体運動について、力学・医学・生理学・生化学・心理学の観点から総合的に科学し、運動の成り立ちおよび身体の可塑性について学びます。そして、応用科学であるスポーツ科学を通じて、スポーツパフォーマンスの向上、身体のサステイナビリティの確保などを総合的に考える能力を養います。主な研究テーマとしては、身体運動に関わる運動生理学および生化学、バイオメカニクス、トレーニング科学、健康スポーツ医学、スポーツ心理学、スポーツ栄養学などがあります。

 以上のコースを擁する本学科では、履修選択の自由度が高く、他コースや文科の科目も柔軟に取得でき、所定の単位をとることで「サブプログラム」や「副専攻」が認定されます。さらに、研究室の数が所属学生に対して多いため、卒業研究で研究分野を選ぶ際の選択肢が多く、教員による細やかな研究指導が受けられるという特徴もあります。卒業生は大学院への進学者が多く、大学教員や公的機関の研究者、官公庁の専門職をはじめ、製造、金融、商社、コンサルタント、情報通信、製薬、マスコミ、出版など様々な企業に就職して活躍しています。
 最後に、当学科には目移りするほどたくさんの「面白さ」があって、しかもどれも手招きしています。四季の変化に彩られ、自由な雰囲気が色濃く感じられるこの駒場キャンパスで、出逢うべきものと出逢えるはずです。

(統合自然学科長/生命環境科学/生物)

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