HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報645号(2023年5月 8日)

教養学部報

第645号 外部公開

〈後期課程案内〉教養学部 統合自然科学科 多様で柔軟な学びの場

統合自然科学科長 中澤公孝

https://www.integrated.c.u-tokyo.ac.jp/

 駒場の教養学部後期課程、統合自然科学科について紹介します。入学したばかりの東大生の皆さんには何となく、駒場は大学生活のスタートを切る地であって、この地で一般教養を学び、その後は本郷の学部に移って専門的な知識を学ぶ、というイメージがあるかと思います。しかし進学選択が迫ってくると、実は駒場でそのまま後期課程に進む道もあることを知ります。その一つが教養学部後期課程であり、統合自然科学科はここに属します。そもそも教養学部には文系三学科、理系三学科がありましたが、それらは二〇一一年に三学科体制、すなわち、教養学科、学際科学科、統合自然科学科に改組され今に至ります。元々、文系、理系が共存する体制にあったわけですが、それらは融合しユニークな三学科に組織化されたことが分かります。この文理融合は統合自然科学科内を見ても共通の特徴です。もう少し正確にいえば、旧来の理系、文系、あるいは伝統的学術領域である数学、物理学、化学、歴史学、文学、心理学、といったカテゴリーにとらわれず、領域を横断するような組織構成となっています。このような特徴は東京大学の他の後期課程と比べても際立っており、駒場の教養後期課程、そして統合自然科学科の最大の特徴となっています。それでは、統合自然科学科を構成する五つのコースについて簡単に紹介しましょう。

数理自然科学コース
 数学は科学全般に応用をもたらすとともに、逆に科学の多くの分野からは新しい数学的アイデアが生まれます。このような循環・再生が生み出す躍動こそ、数理科学という言葉に込められた期待、可能性といえます。本コースでは、このような意味での数理自然科学を主題として、解析学、力学系、確率論などの科目とともに、物理学、化学、生物学などに関する様々な科目を履修することができます。少人数セミナーも用意され、研究へと展開する道も拓かれています。
物質基礎科学コース
 素粒子、原子から生体にいたる様々な階層における物理学・化学を深く広く学ぶことができます。物理化学、有機化学、無機化学などの伝統的な分野に加え、境界領域、分野横断的な新しい内容を取り入れた科目が用意され、各人の興味、志向に応じた選択肢が広がります。それらの多様な履修により統合的な見識、洞察力を養い、新時代を先導する個性的な人材を育成します。
統合生命科学コース
 生命には分子から細胞、動植物などの個体、更には個体群まで多様な階層や種があります。個々の階層における機能、構造、秩序を把握することは勿論ですが、それらを統合する機構、法則性にも目を向けて生命科学の最前線を開拓できる人材育成を目指します。科目も、生化学、分子生物学、細胞生物学などに加え、生物物理学、脳・神経科学、複雑系生物学、構成的生物学などがあり、多彩な分野の知識、実験手法が学べます。流行に囚われない独創性の高い基礎研究が行われている点も本コースの特徴です。
認知行動科学コース
 元来文系学部で行われてきた心理学の諸問題に対して、理系的つまり実証科学的手法でアプローチするという、世界でもまだ珍しい二十一世紀型の学びの場を提供しています。文科・理科生が半々である特徴を活かし、予備知識の多少によらず心の実証研究の本質が自然にわかるような教育研究を展開します。現代社会に対する視点と実証科学的精神とのバランスがとれた学際性豊かな知識を得ることができます。
スポーツ科学コース
 本コースでは、スポーツを入り口としつつも、スポーツ科学のみならず広く身体運動の科学、健康科学に関する専門的知識を分子生物学から行動科学に至る多様な視点から学ぶことができます。そして、応用科学であるスポーツ科学を通じて、スポーツパフォーマンスの向上、身体のサステイナビリティの確保などを総合的に考える能力を養います。主な研究テーマとしては、身体運動に関わる運動生理学および生化学、バイオメカニクス、トレーニング科学、健康スポーツ医学、スポーツ心理学、スポーツ栄養学などがあります。

 これら五つコースはカリキュラム上も連携しており、学生は比較的自由度の高い単位取得方法、例えば副専攻を取得する、分野横断的に多数の専門分野を学ぶ、あるいは専門性を追求する、などの方式を柔軟に選択することができます。また、卒業研究は一定の条件を満たせば、コースをまさに越境して、希望する研究室で行うこともできます。卒業生の多くが総合文化研究科の大学院に進学している事実は、当学科での学びを通じて、さらに知識を深め研究したいとの興味や意欲をもつ学生が多いことの証かもしれません。卒業生の進路は大学教員、官公庁専門職、金融、コンサルタント、IT関連企業などこれも多岐にわたっており、当学科が広く多様な分野で求められる人材を輩出していることがわかります。
 以上、伝統ある東京大学にあって、駒場の教養学部後期課程は、旧来の学術領域におさまらない学内でも極めて特徴的な学びの場を提供することができる体制を構築しています。統合自然科学科もその特徴を象徴する多様で柔軟な学びの機会を提供することができます。ぜひ一度、当学科の門を叩いてみてはどうでしょう。

(統合自然学科長/ 生命環境科学/スポーツ・身体運動)

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