教養学部報
第653号
辞典案内 2024 ドイツ語
森 芳樹
[A]初学者向け
初学者向けといっても1年間あるいはそれ以上使うことになるので、収録語数から以下の辞書を薦める。いずれも簡単で便利な和独辞典など巻末の付属情報も充実し、新正書法を取り入れている。書店で一度手に取ってみることを勧める。一語の全体を一目で見渡せることの重要性をわかってもらいたい。
(1)「クラウン独和辞典」(濱川・信岡監修、新田編修主幹、三省堂、2014、1936頁、CD付録つき、4200円)
(2)「アクセス独和辞典」(在間編集責任、三修社、2021、2176頁、4200円)
(3)「アポロン独和辞典」(根本他編集、同学社、2022、1864頁、4200円)
(4)「プログレッシブ独和辞典」(小野寺他編、小学館、2004、1554頁、3800円)
[B]中級以上向け
「学習用」では物足りないと思えるようになった人たちには、以下の辞書はどうだろうか。本格的な勉強には一冊備えておきたい。新正書法への対応はまちまちだが、これらの辞書を使う人にとって問題はなかろう。
(1)「独和大辞典」(コンパクト版:国松他編、小学館、1999、2882頁、7500円)
(2)「新現代独和辞典」(シンチンゲル他編、三修社、2008、1744頁、4200円)
[C]独独辞典
学習用としては、以下のものを薦めたい。ドイツ(語圏)とドイツ語に関心のある人には、ぜひ手にとってもらいたい。ドイツ語にはドイツ語のリズムと概念構成がある。
(1)Duden Deutsch als Fremdsprache Standardwörterbuch (第3版:Duden, 2018, 1232頁)。約2万語だが丁寧な説明があり、ヨーロッパ言語共通参照枠(B1-C1レベルに対応)も意識した編集になっている。
(2)Langenscheidt Großwörterbuch Deutsch als Fremdsprache(Langenscheidt, 2019, 1342頁, 約12万語)
(3)Duden - Deutsche Sprache in 12 Bänden (1. Die deutsche Rechtschreibung, 2. Das Stilwörterbuch, 3. Das Bildwörterbuch, 4. Die Grammatik, 5. Das Fremdwörterbuch, 6. Das Aussprachewörterbuch, 7. Das Herkunftswörterbuch, 8. Das Synonymwörterbuch, 9. Sprachliche Zweifelsfälle, 10. Bedeutungswörterbuch, 11. Redewendungen, 12. Zitate und Aussprüche). これがいわゆる全12巻のDuden。各巻がそれぞれ改訂を重ねているので、昨年新版が出た巻もあれば現行の版が5年くらい経つ巻もある。皆さんが最初に手に取るのは正書法[1]、文法[4]、意味[10]くらいかもしれない。絵解き[3]、語源[7]、引用や名言[12]を覗いてみるのも楽しいかもしれない。まずは図書館に行って、お気に入りの巻を見つけてみてはどうだろうか。最近はとにかくカラフルで、すぐに見つかる。
もちろん、さらに進んだ段階の、それぞれの用途に定評のある辞書もさまざまな種類がある。
[D]電子辞書
どの辞書が中身に採用されているかに注意が必要。例文も載せていない簡易なものは授業に適さないし、電子辞書に入っているというだけで決定版というわけでもない。第二外国語にカードだけで対応する初学者用だけでなく、たとえば日本語、英語に加えて、独和も大辞典で和独、独独も水準の高いものを揃えたタイプもある。当然のことながら、紙媒体の辞書とは使用方法、機能ともに異なる。
[E]オンライン辞書
最近はDudenをはじめ、信頼のおける、非常に水準の高い独独辞典がネット上にも存在する。ここでもサイトの選択と使い方が鍵だろう。このようなツールは勉強というより確認のためだが、早くそれを使いこなせるように一生懸命勉強してほしい。
(言語情報科学/ドイツ語)
無断での転載、転用、複写を禁じます。