HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報664号(2025年6月 2日)

教養学部報

第664号 外部公開

<時に沿って> 駒場、本郷、柏、そして再び思い出の駒場へ

神田朋希

image664-02-3.png 二〇二五年四月一日付で総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系の助教に着任しました神田朋希と申します。専門は物性物理実験です。「時に沿って」ということで、まず私の略歴をご紹介します。富山県立富山中部高校を卒業後、二〇一五年に東京大学理科一類に入学し、大学生活最初の二年間をこの駒場キャンパスで過ごしました。その後、工学部物理工学科に進学し、二年間本郷キャンパスで学びました。大学院からは柏キャンパスにある東京大学物性研究所に移り、五年間研究に打ち込みました。学位取得後は北海道大学で一年間ポスドクとして勤務し、今年度助教としてこの駒場キャンパスに再び戻ってきました。

 このように、私は学生・院生時代の九年間で駒場、本郷、柏の各キャンパスで学びました。中でも、この駒場キャンパスは学部生時代に所属していた東京大学運動会応援部の本拠地となっており、私にとって特別な思い入れがある場所です。駒場キャンパスの中を歩くと、応援部の命である旗を運ぶために夜明け前からキャンパスにいた日も、学ランを着て猛暑の中キャンパス中を駆け回っていた日も、冷たい雨風が吹きつける中練習に励んでいた日も、今となっては懐かしく思い出されます。また、キャンパス周辺を散歩すると、見知らぬ場所に新しくお店ができていたり、応援部の先輩や後輩と練習後に通い詰めた食堂がなくなっていたりと、六年という時の長さを実感します。

 学部生時代は応援部が生活の全てであり、お恥ずかしいことにまともに勉強した記憶がありません。失ってしまった四年間を取り戻すべく、大学院に進学してからは研究に没頭しました。研究テーマは修士課程の時から一貫して極限環境下における希土類化合物の磁性を扱っています。希土類化合物の特徴として、強い外場を加えると電子物性が劇的に変化する点が挙げられます。時には物性物理学の常識を打ち破るような状態が実現することもあり、そのエキゾチックさが希土類化合物の研究における魅力だと考えています。

 ところで、物性測定における極限環境といえば、主に極低温、超高圧、超強磁場の三つが挙げられます。私は修士課程、博士課程と物性研究所の国際超強磁場科学研究施設に在籍しており、超強磁場下における希土類化合物の磁性の研究で博士の学位を取得しました。そして縁あって、今年度からは極低温実験を専門とする、相関基礎科学系の橘高研究室に所属することになりました。さらに橘高研究室では超高圧下における熱測定技術の開発にも取り組んでおり、若手のうちに三大極限環境下における物性測定を全て経験するという、またとない機会に恵まれました。このご縁に感謝すると同時に、物性測定のプロフェッショナルとなるべく、今後とも精進を重ねてまいります。

(相関基礎科学/物理)

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