教養学部報
第670号 ![]()
<送る言葉> 瀬川浩司先生を送る
増田 建
瀬川先生とは、これまで後期課程(学際科学科)、大学院(広域システム科学系)、そして教養教育高度化機構などにおいて、長年ご一緒に仕事をしてきました。瀬川先生が駒場の助教授として着任されたのは一九九五年とのことで、私が着任した二〇〇四年よりも九年前になります。系会議などで知り合って、瀬川先生は十五年間も長きにわたり、京大に居られて関西弁が抜けないとのことで、関西出身の私とも親しくしていただきました。
その後、瀬川先生は二〇〇六年に先端科学技術研究センターに流動教員の教授として異動され、駒場Ⅱキャンパスに研究拠点を持たれました。瀬川先生のご専門は太陽電池であり、特に当初は有機色素増感太陽電池についてのご研究が中心でした。この太陽電池は、植物が行う光合成の素過程を模したものであり、光を吸収する色素(植物であればクロロフィル)が励起され、電子を放出する原理から電池を構築するというものでした。私は植物の光合成の場である葉緑体形成についての研究を行っていたこともあり、また多様な分野の教員がいる広域システム科学系では、近い分野の教員を見つけるのが困難であることから、よく瀬川研究室の学生の学位審査などに呼んでいただきました。充実した研究設備を誇る瀬川研究室の学位論文は、システマチックかつ大量の分析データから構築されており、分野外で専門用語も分からない私は四苦八苦しながら論文を読み込んで審査に臨んだものでした。審査会でも瀬川研究室の多くのスタッフ・学生が居並ぶ前での審査に緊張したことを覚えています。瀬川研究室では太陽電池の性能や耐久性の向上、また蓄電機能を持たせた電池の開発など、多くの成果を挙げられました。その後、ペロブスカイト太陽電池へと研究の中心をシフトされ、現在も多くの研究成果を挙げられています。この原稿の執筆時点で、Scopusにおける文献数は二九四であり、引用数も一一〇〇〇件を超えています。正に先端研究者としてこの分野を先導してこられました。
ご存知のように瀬川先生は、非常にエネルギッシュな方で、明るい性格の方です。強い発言力を発揮して、様々な学内行政や組織運営にも貢献されてきました。お伺いする中でも、理系における現場感覚を活かして、キャンパスプラザ建設、3号館改修、アドバンストリサーチラボ建設、駒場ファカルティハウス建設とそれに伴うレストラン誘致に関わられたそうです。また教養学部報委員長をはじめ、三層の長である部会主任、学科長、系長は勿論のこと、広域科学専攻長も務められました。現在、私と瀬川先生は教養教育高度化機構の機構長と部門長の関係となります。本機構の前身である教養教育開発機構の時にNEDO新環境エネルギー科学創成特別部門を二〇〇七年に設立され、二〇一二年には環境エネルギー科学特別部門と名前を変えながら、ずっと部門長として、駒場における環境エネルギー研究ならびに教育を牽引されました。また機構のプロジェクトとして、SDGs教育推進プラットフォームも立ち上げられ、駒場におけるSDGs教育にも尽力されました。今年度で瀬川先生が定年退職をされるにあたり、これらの組織をさらに発展できないか検討を行いましたが、瀬川先生の推進力なしで立ち行かないことや、機構長である私の力不足もあり、これらについては一旦店じまいとなります。
瀬川先生が駒場を去られることは本当に残念で、瀬川先生の剛腕なしでこの駒場がやっていけるのか、残されたものとしては不安ではあります。ただ研究は継続されるとのことですので、またご助言いただきたいと考えています。
(広域システム科学/生物)
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