HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報670号(2026年2月 2日)

教養学部報

第670号 外部公開

An Evening of Sankyoku「三曲の夕べ──邦楽鑑賞教室入門編」開催報告

君 康道

image670-06-2.jpg まずはここに掲げた絵の問題の答え、おわかりでしょうか。日本で生まれ育った学生のみなさんはこの楽器自体はご存じと思いますが、細部までおわかりの方はそれほど多くはないのではないでしょうか。昨秋十一月六日、日本の伝統音楽にそのようなイロハから触れることのできるイベントが18号館ホールで催されました。題して「An Evening of Sankyoku -Introduction to Traditional Japanese Music三曲の夕べ──邦楽鑑賞教室入門編」。この図はその宣伝ポスターと一緒に掲示していたものの一つで、キャンパス内で目にした方もいるかと思います。「三曲」とは箏、三味線、尺八の三つの和楽器で演奏される邦楽の一分野で、このイベントではそれぞれの楽器の紹介と楽曲の説明、そして生演奏という構成で三曲の魅力が紹介されました。講師を務められた五名の奏者の方々はいずれも当代きっての一流の方ばかり。日本の伝統音楽を留学生などのみなさんにも広く紹介したいという目的から今回のイベントは全て英語で行われ、当日は約三十か国/地域からの留学生や外国人教員などを含めた学生教職員約百名が、ひととき日常の喧騒から離れて三曲の世界へと誘われました。

 イベントは長谷川将山氏(尺八)、日吉章吾氏(箏)、平田紀子氏(三味線)による『御山獅子』の演奏で始まりました。歌唱が入る「地歌」と呼ばれる演奏は、三つの楽器の音色と三味線と箏を弾きながら歌う日吉・平田両氏の美声が見事に調和し、聴衆は早くも三曲の魅力に引き込まれていきました。続いては長谷川氏による尺八の解説。まずは本文の冒頭に挙げた問題の答え合わせがあり(正解は「五つ」)、尺八の構造や音階、音程、そして指使いや息の吹き方ばかりでなく首を使って音色を様々に変化させ曲の情感を膨らませる尺八の奏法をわかりやすく説明され、その技術を独奏『鶴の巣籠』で披露してくださりました。続く日吉・平田両氏による三味線の解説では右手に持つバチの弾き方で多彩な音を繰り出す奏法などが紹介され、三味線奏者でもある日吉氏による地歌『黒髪』の演奏で、タイトルの如く叙情的な三味線の響きに会場全体が包まれました。そして箏の解説では上原真佐輝氏と小室旺士氏が、「平調子」と「雲井調子」という箏で用いられる二つの調弦(チューニング)での『さくらさくら』と『Amazing Grace』の弾き比べや、風や波など自然界の音を表現する奏法などの実演、そしてお二人による地歌『初音曲』の演奏で、その豊潤な調べを存分に紹介してくださりました。最後は「三曲の魅力」と題し、五名の奏者全員によって縁起の良い『松竹梅』の合奏曲がこの日のための特別の編曲で披露されました。各楽器の解説では主に優雅な曲調でその魅力が紹介されましたが、この曲では三つの楽器の音色が幾重にも折り重なるような速弾きによる圧巻の展開もあり、まさにイベントタイトルの「三曲の夕べ」に相応しい、三曲の魅力が余すことなく詰め込まれたような素晴らしい演奏で締め括られました。

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 終演後も聴衆の興味は尽きることがなく、箏に直接触れさせてもらったり、奏者の方々と直接話をさせてもらったりするなど、会場利用時間ギリギリまでその魅力に触れ、アンケートでは「初めて邦楽に触れました。その魅力に一気に引き込まれた」「各楽器の説明もわかりやすく、実演を目にしながら学ぶことができ、とても興味深かった」「本当に曲名通りの情景を目にしているような素晴らしい演奏だった」「良い音楽には国境はないのですね」といった好評の声が多数寄せられました。

 今回のイベントは独立行政法人日本芸術文化協会に設立された「文化芸術活動基盤強化基金」の助成を受けて邦楽の若手の育成と海外発信のプロジェクトを進められている特定非営利活動法人日本音楽国際交流会による企画をもとに、同会と国際交流センターグローバリゼーションオフィス、グローバル教育センター駒場支部、グローバルスタディーズ専門委員会の共催という形で開催されました。当日の運営には司会や会場係としてグローバルスタディーズプログラムの学生スタッフも加わり、特に司会の二人は質疑応答での急な通訳にも見事に対応してくれました。講師を務められた五名の奏者の方々をはじめ、イベント開催に多大なるご支援ご尽力をいただきました全てのみなさまに心よりお礼を申し上げます。

(国際交流センター)

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