HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報671号(2026年4月 1日)

教養学部報

第671号 外部公開

駒場望遠鏡のお話

鈴木 建、直川史寛、滝澤 勉

image671-2-2_1.jpg 駒場Ⅰキャンパスの西北の角に近い部分、野球場とテニスコートに挟まれた16号館は八階建ての建物である。その屋上に宇宙地球部会管轄下の二階建の半球ドームがあり、その中には口径28cmの望遠鏡がある。

 この望遠鏡を使った駒場教職員とご家族向け天体観望会を、去る二〇二五年十一月初旬と二〇二六年一月下旬に計五日間行った。
十一月はあいにく曇天気味の時間帯が多く、全く星が見られなかった回の参加者には、直川の「おしゃべり」をお楽しみ頂くことになったが、一月の回は東京の真冬らしい澄み渡る空に、月のクレーターや木星とその衛星達をクリアに見ることができた。

 写真は観望会の様子を、教養広報・情報企画チームの方に撮影頂いたものである。

 さてこのドーム、16号館が建てられた直後の一九九四年からあり、当初、赤外線を用いた天体の観測的な研究などに利用されていた。しかし、望遠鏡を利用していた観測者達の他研究機関への異動に加え、大都会の真ん中の立地では避けられない「光害」のため、最先端の天文学研究を行うには厳しい環境であるという状況があり、研究室所属の大学院生有志が時折利用する以外は継続的な観測活動は行われないという、駒場望遠鏡不遇の時代が二十余年続くこととなる。

 二〇一六年に、自らは望遠鏡を使わない理論研究を行っている鈴木が他大学から異動してきたが、駒場望遠鏡不遇の時代は継続した。
不遇の時代の終わりの兆候が見えるのは、二〇一〇年代も終盤になってからである。

 東大インタープリター(現教養教育高度化機構科学技術コミュニケーション)部門の方々からコンタクトがあり、その後二〇一九年、二〇二〇年の二回、市民公開講座「スター・ウォッチング―東大で冬の夜空を楽しもう!」が開催され、 多くの皆様に星空を見て頂いた(その際の大掃除では、インタープリター部門の皆様に大変お世話になりました)。

 COVID―19の緊急事態宣言が小康状態となった二〇二一年後半、駒場で開催された宇宙論の集中講義に直川(理学系研究科物理学専攻当時修士一年)が参加し、講義間の休み時間に鈴木に問うた。「この建物の屋上に天体ドームが見えていて前から気になっていたんですが、どうやったら使えるんですか?」「使いたかったら、使ってみていいよ。僕は使い方知らないけど」的な会話の後、屋上望遠鏡による共同研究として、広域科学専攻の出入り許可者として直川を登録し、精力的な活動が始まった。

 駒場望遠鏡を使用する上での問題は大きく二つある。一つ目は天体を自動で導入する装置が欠落していること。東京の夜空では明るいごく一部の星をのぞき、手動で天体に望遠鏡を向けることは困難だ。二つ目は、天体画像を撮影するカメラなどが無いこと。直川は個人的な興味から、人力での天体導入とスマホのカメラを用いた天体観測を学部生の頃から追求していた。その技術を活かせば駒場の望遠鏡も再活用できると考えたのである。直川が個人で使っていたよりはるかに大きな駒場の望遠鏡。その性能を活かし観測技術を向上させた。大気の揺らぎに負けずに月のクレーターや木星の縞模様を仔細に映し出す技術。スマホで撮像した画像を解析し、超新星の明るさの変化を捉えることにも成功した(撮影した天体等は直川のXやInstagram(@Sumafo_obs)に掲載)。

 駒場天文台はその後、宇宙地球部会が開講する講義等の受講生向けに観望会を開いている他、二〇二四年から駒場祭で「天文台ドームツアー」を出展し、大変な人気企画となっている。最近では学外の大学の講義にも活用されている。天体写真家の顔も併せ持つ滝澤(共通技術室)は、二〇二四年の駒場祭以降、観望会の主要メンバーとして駒場望遠鏡活動に参画している。滝澤がこの望遠鏡を用いて撮影した写真は、https://tech.c.u-tokyo.ac.jp/space/Komaba/に一覧としてまとめてあるので、是非ご覧頂きたい。

 冒頭の観望会には、直川、滝澤の他、東大EMPの高梨直紘氏と宇宙線研の小野宜昭氏も参画し、駒場、本郷、柏の三キャンパスに散らばる宇宙・天文研究者の緩やかなネットワーク的活動という性格も併せ持ってきている。

 世界的にも稀有な「大都会の中の望遠鏡」として、持続可能な形で駒場望遠鏡活動を細く長く継続していければと考えている。

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(広域システム科学/宇宙地球)
(理学系研究科物理学専攻)
(教養学部共通技術室)

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