HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報673号(2026年6月 1日)

教養学部報

第673号 外部公開

<時に沿って> Many directions

ベズ ニール

image673-3-1.jpg 二〇二六年四月に、大学院数理科学研究科に着任しました。私はイギリスのレスターで生まれ育ちました。オックスフォード大学(学部・修士)とエディンバラ大学(博士)を卒業しました。東京大学に着任する前は、グラスゴー大学、バーミンガム大学、埼玉大学、名古屋大学に勤めていました。

 エディンバラ大学での研究中に調和解析の分野に出会い、それ以来この分野が私の研究の中心となっています。調和解析はフーリエ級数やフーリエ変換に起源を持ち、現在私は一九六〇年代に提起されたフーリエ制限予想およびそれに関連する問題に関心を持っています。驚くべきことに、フーリエ制限予想と密接に関係する問題の一つに、「掛谷予想」として知られる興味深い幾何学的問題があります。この問題の原型は、日本の数学者・掛谷宗一による一九一七年の有名な論文にまで遡り、「長さ1の針(線分)を平面内で一回転させることができる領域のうち、面積が最小のものは何か?」という問いとして提起されました。このように針を完全に回転させることができる領域は、現在「掛谷集合」と呼ばれています。この問題は、専門家でなくても説明することができ、実際に考えてみるのも楽しい一方で、その解答は非常に意外で繊細であるという、数学の魅力をよく表す例の一つです。実際には、面積をいくらでも小さくした掛谷集合を構成することが可能であることが知られています。この事実は、掛谷の論文の発表から数年後にアブラム・ベシコヴィッチによって証明されました。

 掛谷集合は三次元以上でも定義することができ、現代的な掛谷問題はこのような集合のフラクタル次元に関するものとなっています。掛谷自身は、一九〇六年から一九〇九年にかけて東京大学(当時は東京帝国大学)の学部学生として優れた成績を収め、その後、数年を経て、再び東京大学に教授として戻りました。私は、このように掛谷先生とつながりを持てることを大変嬉しく思っています。

 最後に、日本への移住について少し述べたいと思います。二〇一四年に日本に移住し、それが私の人生を大きく変えるきっかけとなりました。イギリスに帰るたびに、この十二年間が私にどれほど影響を与えたかを実感します。特に私の味覚は大きく変わりました。日本には多くの上品で洗練された料理があるにもかかわらず、イギリスに戻ったときに一番恋しくなるのは納豆と緑茶です。イギリスから日本に帰ってきたときに、恋しくなるイギリスの食材があまりない、ということに気が付くと私は日本の文化に溶け込んでいるのだな、と感じております。

 今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

(数理科学研究科)

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