教養学部報
第674号 ![]()
<時に沿って> 目で見えて、手で触れられるものを
高森 翔
二〇二六年四月一日付で、広域科学専攻相関基礎科学系の助教に着任いたしました、高森翔と申します。京都大学理学部を卒業後、イギリスのノッティンガム大学およびケンブリッジ大学にて修士課程、博士課程を修了し、MResおよびPhDの学位を取得しました。博士課程の途中から現在に至るまで、リポソーム(脂質二重膜小胞)を用いて細胞のような分子システム、いわゆる人工細胞を構築する研究に取り組んでいます。
研究を仕事にしたいと強く思うようになったきっかけは、京都大学在学中に参加した、アメリカの大学が主催する合成生物学の学生コンペティションiGEMでした。そのときに出会ったインストラクターやチームメイト、また活動を通じて出会った他大学の方々が、サイエンスに熱く、同時にきわめて人間味にあふれており、研究者という仕事に大きな魅力を感じました。また、この経験を通して自身の英語力を根本的に鍛え直す必要性を感じ、学部卒業後に留学するに至りました。イギリスでの修士・博士課程では、研究面だけでなく、さまざまな人々との出会いや経験を通して、人間としても大きく成長できたと感じています。
人工細胞研究を本格的に始めたのは博士課程の途中からです。博士課程の当初は、大腸菌ゲノム上の遺伝子座の運動が培養環境によってどのように変化するかを、ブラウン運動の解析を通して研究していました。その後、縁があり大腸菌とジャイアントリポソーム(以下、リポソーム)を融合させるプロジェクトに携わる機会を得て、以降はリポソームを主に用いた研究に取り組んできました。これまで、リポソームと細胞を電気融合する技術や、それを高精度に実現するためのマイクロ流体デバイスの開発に取り組み、さらにリポソーム内部に細胞核を形成する系も構築してきました。
これらの研究を進めるなかで、リポソームは細胞のモデルとして基礎科学的に非常に興味深い一方で、実社会のなかでその有用性を示すにはなお課題が多いことを強く意識するようになりました。特に、目で見て、手で扱えるスケールの人工細胞システムが必要ではないかと考えるようになり、現在はリポソームを用いて多細胞組織様の集合体を構築する研究に取り組んでいます。
このたび初めて大学教員として勤務することとなりましたが、今後は上述の研究を積極的に発展させていくとともに、教育や学務にも誠実に取り組んでまいりたいと考えております。私生活では、PhD取得後に結婚し、現在は共働きで子育てをしています。研究と家庭の両立の難しさを日々実感する一方で、限られた時間の大切さや、研究に取り組めることのありがたさを以前にも増して感じています。研究・教育の両面で着実に力を尽くしてまいりたいと思います。教養学部という学際的な環境のなかで、多くの方々から学びながら研究を深めていけることを楽しみにしております。何卒よろしくお願い申し上げます。
(相関基礎科学/化学)
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