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教養学部報

第676号 外部公開

<時に沿って> 素朴な問いから始まった歩み

上田修裕

 本年八月一日付で総合文化研究科の広域科学専攻に着任いたしました上田と申します。学位取得後、海洋研究開発機構(JAMSTEC)や学習院大学での研究生活を経て、このたび着任の運びとなりました。専門分野は地球科学で、主に地球などの水惑星の熱水系における「水―岩石反応」について、室内実験や野外調査を組み合わせながら研究を進めております。実験室での再現実験と実際のフィールド観察を密接に連動させ、岩石に残された微小な痕跡や化学組成の変化を詳細に分析することによって、空間的にも時間的にも遥か遠くで起きた地球の出来事を推定・復元できる点に、言葉にしがたい深い魅力を感じています。

 これまでの歩みを振り返ると、私の原点は小学生の頃にぼんやりと抱いた「自分は何者なのか、なぜ生命は存在するのか」という素朴な疑問に遡ります。それらの疑問を抱えて過ごす中で、生命と地球の歴史に関する一冊の本に出会い、地球の歴史や当時の環境を科学的に調べることでその大きな謎に迫れるのではないかと考え、現在の研究分野へと足を踏み入れました。それまで特別に地球科学に触れる機会が多くあったわけではなく、昔から研究者を強く目指していたわけではありませんでしたが、多くの良き出会いや巡り合わせに恵まれ、子供の頃からの問いを胸に歩み続けられたことを大変幸せに思っています。

 また、地球科学を研究対象とする中で、私にとって大きな原動力となったのが研究室での野外調査でした。学生時代は実験室での分析が研究手法の中心でしたが、アフリカをはじめ国外の様々な地域へ毎年のように野外調査で赴き、日本では見られない地層や多様な岩石に直接触れる中で多くの知見を得ました。ときに危険を感じたり、体調を崩したりしてしまうような過酷な環境もありましたが、観光では絶対に足を踏み入れない土地で「未知の世界」に身を置く体験は、私にとって研究者としての視野を広げる非常に大きな刺激となりました。

 これからも研究者として原点に立ち返りながら、地球と生命が辿ってきた壮大な歴史を、科学の眼でひとつずつ解き明かしていけるよう、日々精進してまいります。教育面におきましても、一人でも多くの学生に地球科学の本質や現場の面白さを理解してもらえるよう尽力いたします。国内外での調査や多様な研究環境で培った経験を学生の皆さんに還元し、講義や実験を通じて共に議論し学びながら、新たな研究を発展させていければ幸いです。

 研究者・教育者としての新たな歩みを、このような恵まれた環境で本格的に始められることに、心より感謝申し上げます。これまでお世話になった方々への感謝を日々の糧とし、一日も早く大学の教育と研究に貢献できるよう努めてまいります。

(広域システム科学/宇宙地球)

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