教養学部報
第676号 ![]()
<時に沿って> 重ね合わせて強め合う
池田 大
「化学反応の制御・可視化を実現する」。私の研究の軸であり、大学院時代の指導教員から受け継いだ研究目標です。二〇二六年八月一日に長谷川宗良教授の研究室に助教として着任いたしました池田大と申します。理科大理化、東工大(現・科学大)理化の修士・博士課程、理研RAPを経て、現職に至ります。気相分子科学が専門で、学生時代は高強度レーザー光を用いて気体分子の回転運動をコヒーレントに制御し、その状態分布やダイナミクスを観測しており、前職では、近〜中赤外レーザー光を極紫外〜軟X線へ変換した、高次高調波と呼ばれる光を用いた気相分子への応用研究をしておりました。長谷川先生も、強光子場科学や超高速分光など、高強度レーザー光を用いた気相分子科学をご専門とされており、私は理研で得た経験を携えて学生時代と近い領域に戻って参りました。
私の興味は分子運動固有状態間のコヒーレント制御(ほぼ100%の高効率励起)に端を発しており、冒頭で述べた目標がストライクゾーンど真ん中でありました。一方で、借り物の大目標のように感じ、しっくり来ていない時期もありました。真似から始める学びは間違っていないと思いますが、次のステップに進むためのひとつの解になり得ると考えているのは、異なる分野の技術や着想を取り入れ、自分なりに組み合わせることで、それまでできなかったことを可能にすることです。そのような研究を目指し、学位取得後は光源開発を専門とする研究室に移りました。自身で光源開発に直接携わることはなかったものの、最先端レーザー技術の一端に触れて吸収(できたと信じたい)し、また独自光源の応用研究と銘打って荷電粒子イメージング装置開発に従事するなど、装置開発により新たな科学を切り開く能力に磨きをかけてきたつもりです。こうした経験は、ラボ内のメンバーからはもちろん、学生時代よりも多様な研究室との交流を通じて、様々な方々から知見・着想・刺激を受けたことで、充実したものになったと思います。
駒場に着任するにあたり初めに感じたのは、理研で感じたのと類似の多様性でした。学生のうちから様々な分野の専門家と接する機会があり、私自身だけでなく、学生にとっても柔軟な思考を養える環境ではないかと思います。このような環境の一員となり、これからも多くのことを吸収できるであろう喜びを感じる一方、私からも少しでも皆様に還元できるよう、日々教育にも研究にも勤しまなくてはと改めて思います。
私自身はここ駒場で、分子線源や荷電粒子イメージング装置、波長変換をはじめとする光源技術などの開発を組み合わせて、長谷川先生とともに独自の研究を開拓していく所存です。今年度限りで指導教員が退職されることもあり、これからは秘伝のたれのごとく皆様から吸収した様々なアイデアを継ぎ足しながら、受け継いだ「化学反応の制御・可視化を実現する」を私なりに育てていきたいと思います。
(相関基礎科学/先進科学)
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