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最終更新日:2026.01.09

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トピックス 2026.01.08

【研究成果】生まれたての惑星たちはふわふわ ──4つの若いトランジット惑星の正確な質量を決定──

2026年1月8日
自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
自然科学研究機構国立天文台
東京大学大学院総合文化研究科

発表のポイント

  • 年齢約2,000万年の若い恒星「おうし座V1298星」を公転する4つの惑星の質量を正確に決定した。
  • 4つの惑星はその大きさに対して質量がとても小さく、非常に低密度であることがわかった。
  • 若い惑星の大気や半径の進化の理論を観測によって裏付ける成果で、銀河系で最も一般的と言われる小型の惑星が生まれたての時はどのような姿であったかを明らかにした。
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公転する4つの系外惑星の想像図。ふわふわの大気が主星からの放射を受け、
宇宙空間に流出しているかもしれない。 (クレジット:アストロバイオロジーセンター)

概要

 東京大学大学院総合文化研究科の成田憲保教授、福井暁彦講師、ジェローム・デレオン特任助教らのMuSCATチーム(注1)を含む国際共同研究グループは、おうし座分子雲の中にある年齢約2,000万年の若い恒星「おうし座V1298星(V1298 Tau)」を公転する4つの惑星のトランジット(注2)を長期的に観測し、4つの惑星の半径が地球の5〜10倍程度であるのに対して、質量は地球の5〜15倍程度しかなく、非常に低密度であることを明らかにしました。この発見は、生まれたての若い惑星は大きく膨らんでいて、時間とともに大気を失いながら収縮し、小型の惑星へと進化していくという理論を初めて観測的に裏付ける成果です。

 本研究成果は、2026年1月7日(英国時間)に英国科学誌Natureのオンライン版に掲載されました(2026年1月8日号のNature本誌に掲載されました)。


発表内容

 2025年末までに、6,000個を超える系外惑星(太陽以外の恒星を公転する惑星)が発見されています。これまでに発見された系外惑星の中で最も多いのは、地球よりやや大きいスーパーアース(地球の1〜2倍の大きさ)や海王星よりやや小さいサブネプチューン(地球の2〜4倍の大きさ)と呼ばれる小型の惑星たちです。こうした小型惑星は銀河系で最もありふれた「一般的な」惑星であると言えますが、それらが生まれたばかりの頃はどのような姿であったかはこれまでわかっていませんでした。

 研究チームは、おうし座分子雲の中にある若い恒星「おうし座V1298星(V1298 Tau)」を公転する4つの惑星に着目しました。おうし座V1298星は質量が太陽とほぼ同じくらいですが、年齢は約2,000万年であり、生まれたての太陽のような恒星と言えます。おうし座V1298星には、2015年に行われたケプラー宇宙望遠鏡の観測データから4つのトランジット惑星が発見されていました。これまでこの4つの惑星の質量を測定しようという試みが視線速度法(注3)という方法によってなされてきましたが、若い恒星は表面の活発な磁場の活動によって惑星とは無関係の(しかも惑星由来よりも圧倒的に大きな)視線速度のシグナルが生じてしまうため、これまでに報告されてきた惑星の質量は全く正確ではないということが指摘されていました。

 本研究で、研究チームは視線速度法に代わる惑星の質量の決定方法として、トランジットタイミング変動(Transit Timing Variation:TTV)法を採用しました。複数の惑星が公転する惑星系では、惑星同士が近づいた際にお互いの引力が影響を及ぼし合うため、トランジットのタイミングが一定の間隔からずれます。このタイミングのずれを調べることで、引力を及ぼしている惑星の質量を推定することができます。視線速度は恒星表面の活動の影響を大きく受けてしまいますが、トランジットのタイミングはその影響をほとんど受けないため、若い恒星を公転する惑星の質量を正確に決定することができます。

 研究チームは、2015年にケプラー衛星で取得されていたトランジットのデータに加えて、2019年から2024年にかけて宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による長期的なトランジットの追観測を遂行しました。地上望遠鏡では4つの惑星に対して計44回のトランジットの追観測が行われましたが、そのうち26回のトランジットはMuSCATチームによって観測されたもので、MuSCATチームが観測に主要な貢献を行いました。MuSCATチームのメンバーであるアストロバイオロジーセンター(国立天文台併任)のジョン・リビングストン特任助教(本研究の筆頭責任著者)および東京大学先進科学研究機構のジェローム・デレオン特任助教らは、追観測で得られたトランジットのデータをもとにトランジットタイミング変動(図1)を詳細に解析しました。

 その結果、4つの惑星は地球と比べて半径が5〜10倍程度と巨大惑星のように見えるのに、質量はスーパーアースやサブネプチューンに相当する5〜15倍程度しかなく、非常に低密度のふわふわの惑星であることがわかりました。つまり、生まれたての巨大惑星のように見えていたのは、実際には大質量の巨大惑星ではなく、将来スーパーアースやサブネプチューンになる比較的小さな質量の惑星たちだったのです。つまり、銀河系で最も一般的な惑星である小型の惑星が、生まれたての時にはふわふわの惑星だったことが明らかになりました。

 若い惑星は大きく膨らんでいて非常に低密度であるという理論的な仮説はありましたが、実際に生まれたての惑星の質量と半径を正確に測定して観測的に仮説が裏付けられたのはこれが初めてです。今回の観測成果は、生まれたばかりの小型の惑星はどのような姿であったかを明らかにしたという点で大きな意義があります。

 この4つの惑星は現在内部の温度が下がるとともに大気の一部が宇宙空間に流出し、質量を失って、半径が収縮している最中にあると考えられます。これは若い惑星の質量や半径、大気に大きな変化が起きる「進化」の様子を見ていることに相当します。この4つの惑星に対しては、2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での惑星大気の観測が進行中であり、大気の組成・性質やどのくらい流出しているのかといった知見が近い将来に得られると期待されています。今後のさらなる追観測は、惑星の進化の理論を観測によって検証し、より洗練させていく重要な研究となるでしょう。

 さらに、太陽系を含む多様な惑星系たちがどのように形成するのかを明らかにしていくためには、おうし座V1298星系だけではなく、今後も新たな若いトランジット惑星を発見し、その惑星たちの性質を追観測によって調べ、惑星の進化の様子を解明していくことが不可欠です。そうした観測を進めるため、現在MuSCATチームは新たな若いトランジット惑星の発見やトランジットタイミング変動の長期的な観測を行うことを目的として、チリと南アフリカにある望遠鏡用に新しい観測装置の開発を進めています(科研費・基盤研究(S)・課題番号24H00017)。今後の若いトランジット惑星の研究により、惑星の進化がどのように進んでいくのか、そしてどのようにして多様な惑星系ができていくのかが明らかになると期待されます。

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図1:おうし座V1298星系のトランジットタイミング変動(掲載論文の図1を改変して引用)
おうし座V1298星系の4つの惑星(惑星b,c,d,e)のトランジットタイミング変動(一定周期からのずれ)。横軸は2009年1月1日を基準とした日数(単位は日)。縦軸はトランジットタイミング変動(単位は分)。青丸は観測されたトランジットタイミングのデータ。灰色の線は惑星の質量などの誤差を考慮して想定される(N体シミュレーションという手法による)トランジットタイミング変動の理論的なモデル。

〇関連情報:
「プレスリリース① 共鳴し合う6つ子の惑星を発見 ―全ての隣り合う惑星の公転周期が尽数関係を持つ惑星系HD 110067―」(2023/11/30)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20231130010000.html

「プレスリリース② 火山活動の可能性がある地球サイズの惑星を発見 ―潮汐力により加熱された系外惑星LP 791-18d―」(2023/05/18)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20230518000000.html


発表者・研究者等情報

東京大学大学院総合文化研究科

広域科学専攻
成田 憲保 教授
 兼:同大学院附属先進科学研究機構 教授
 兼:自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター 客員教授
福井 暁彦 講師
 兼:同大学院附属先進科学研究機構 講師
渡辺 紀治 特任研究員(日本学術振興会特別研究員-PD)

附属先進科学研究機構
デ レオン ピトゴ ジェローム(Jerome Pitogo de Leon) 特任助教

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター

 リビングストン ジョン ヘンリー(John Henry Livingston) 特任助教
森 万由子 特任研究員(日本学術振興会特別研究員-PD)


論文情報

雑誌名:Nature
題名:A young progenitor for the most common planetary systems in the Galaxy
著者名:John H. Livingston*, et al.
DOI:10.1038/s41586-025-09840-z


研究助成

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費:課題番号24H00017, 24H00248, 24K00689, 24K17082, 24K17083, 25KJ0091, 25K17450)および日本学術振興会二国間交流事業(課題番号JPJSBP120249910)等の支援により実施されました。本研究に用いられたMuSCAT2とMuSCAT3は、アストロバイオロジーセンターで開発・運用されている観測装置です。MuSCAT3は日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費:課題番号18H05439)と科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(さきがけ:課題番号 JPMJPR1775)の支援のもとで開発されました。


用語解説

(注1)MuSCATチーム
成田教授と福井講師らが岡山県の188 cm望遠鏡、スペイン・テネリフェ島の1.52 m望遠鏡、アメリカ合衆国・マウイ島の2 m望遠鏡、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の2 m望遠鏡用に開発した、3つもしくは4つの波長帯で同時にトランジットを観測できる多色同時撮像カメラMuSCATシリーズ(装置名称はそれぞれMuSCAT、MuSCAT2、MuSCAT3、MuSCAT4)を用いて研究を行っているチーム。MuSCATはMulticolor Simultaneous Camera for studying Atmospheres of Transiting exoplanetsの略で、岡山県の名産マスカットにちなんでいます。

(注2)トランジット
系外惑星がその主星の手前を通過すると、主星の明るさが見かけ上わずかに暗くなります。この現象をトランジットと呼び、トランジットを起こすような軌道を持つ惑星をトランジット惑星と呼びます。

(注3)視線速度法
系外惑星を発見し、質量を決定する代表的な手法で、ドップラー法とも呼ばれます。系外惑星が公転していると、主星もその惑星との共通重心のまわりを周期的に運動するため、観測者から見ると近づいたり遠ざかったりしています。すると主星が放つ光の吸収線の中心波長がドップラー効果によって周期的にわずかに変わるため、その波長の変化から惑星の存在と質量を知ることができます。しかし、吸収線の中心波長は主星の表面にある黒点(主星と一緒に自転して移動したり、時間の経過とともに生成・消滅する)によっても変化します。若い恒星では黒点の活動が非常に活発なため、惑星由来ではなく黒点由来の視線速度の変化が卓越してしまいます。そのため、特に若い恒星の惑星の質量を視線速度法で決定するのは困難となります。


関連リンク

アストロバイオロジーセンター
https://www.abc-nins.jp/newborn_planets_are_puffy/

国立天文台
https://www.nao.ac.jp/news/science/2026/20260108-abc.html


―東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 広報室―

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