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2026.03.30
【研究成果】スナメリは鳴音から性別を知ることができるのか...? エコーロケーション音の周波数に雌雄差がある可能性を初めて示す成果
2026年3月30日
三重大学
東京大学大学院総合文化研究科
鳥羽水族館
下関市立しものせき水族館
宮島水族館
発表のポイント
- 鳥羽水族館、下関市立しものせき水族館、宮島水族館で飼育されているスナメリ11頭を対象に、鳴音の周波数を測定した。
- その結果、スナメリのエコーロケーション音のピーク周波数は,体長が大きいほど低く、同じ体長でもオスの方がメスよりも低いことがわかった。
- このことから、スナメリの鳴音の周波数は雌雄で異なる可能性が示された。
- 本研究の結果は、スナメリの社会や繁殖戦略を理解するうえで重要な知見を提供している。
概要
三重大学大学院生物資源学研究科博士後期課程に在籍していた寺田知功さん(現・東京大学大学院総合文化研究科特任研究員・筆頭著者)は、同研究科の指導教員の森阪匡通教授(責任著者)、鳥羽水族館、下関市立しものせき水族館、宮島水族館とともに、これら3つの水族館で飼育されているスナメリ11頭の鳴音の周波数を調査しました。これまで、スナメリの鳴音にどのような情報が含まれているのかは謎に包まれていましたが、本研究により体長や性別に関する情報が含まれている可能性が示されました。この成果は、スナメリの社会や繁殖戦略等の生態を理解するうえで重要な知見を提供するものです。
この研究成果は2026年2月13日に、国際学術誌「Mammal Study」にオンライン掲載されました。
背景
多くの動物が発する鳴音は、時に本来の目的とは異なる二次的な機能を果たすことがあり、この現象は「音の多機能性」と呼ばれます。音の多機能性に着目した研究は、音の機能がどのように分化してきたのかを理解するうえで重要です。発した音の反響を手がかりに周囲の環境を把握する「エコーロケーション」を行うコウモリの一部の種では、エコーロケーション音に多機能性が見られ、この音が性別の認識にも使われている可能性が示されています。本研究では、鳴音を主にエコーロケーションに用いているスナメリを対象に、エコーロケーションの鳴音が体長や性別に伴ってどのように変化するのかを調べました。
研究内容
鳥羽水族館、下関市立しものせき水族館、宮島水族館で飼育されているスナメリ11頭(オス5頭、メス6頭)を対象に、エコーロケーションの鳴音の周波数を調べました。その結果、スナメリの鳴音の周波数は体長が大きくなるほど低下し、さらにオスの方がメスよりも低い周波数の鳴音を発することがわかりました(図1)。このことから、スナメリの鳴音の周波数は雌雄で異なる可能性が示されました。もしかするとスナメリは、他個体のエコーロケーションの鳴音を聞くことで、異性の繁殖相手を探索できるのかもしれません。
今後の展望
本研究は、エコーロケーションの鳴音の周波数が雌雄で異なることを示しましたが、スナメリ自身がこの雌雄差を認識し、利用しているかどうかはわかりません。今後の研究で、鳴音を再生するプレイバック実験等を通して、スナメリがこの差異を認識できるのか否かを検証する必要があります。
謝辞
本研究は京都大学野生動物研究センター共同利用・共同研究および、JSPS科研費22H05651、22J11913、24H01436、24KJ0074の助成を受けたものです。
論文情報
雑誌名:Mammal Study
題名:Preliminary evidence for peak frequency variation related to body length and sex in echolocation clicks of narrow-ridged finless porpoises
著者名:Terada T, Wakabayashi I, Tatsukawa T, Takagi H, Akagi F, Morisaka T
DOI:10.3106/ms2025-0032

