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最終更新日:2026.08.18

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トピックス 2026.08.18

【研究成果】コーディネーションがもたらす非対称的な両手効果 ──手指運動における速度と振幅の変調を結合振動子モデルと実験で説明──

2026年8月18日
東京大学

発表のポイント

  • 両手の指を左右対称で同時に動かすと、利き手(右手)は片手の時より遅くなり、非利き手(左手)は逆に速くなることを、健常者を対象とした実験で示しました。
  • 利き手の速度低下は、片手運動時の最大速度の左右差、非利き手の速度向上は、運動振幅の変化で予測でき、左右の速度変化に異なる要因が働くことを明らかにしました。
  • 左右の手の非対称性を組み込んだ数理モデル(結合振動子モデル)で非対称的な加速・減速と振幅変化を再現し、協調(コーディネーション)動作における速度・振幅・安定性の関係を統合的に説明することに成功しました。
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実験方法と結果の概要
参加者(右利き)は人差し指の屈曲-伸展動作を最大速度で10秒間行いました。動作様式は、片手単独試行(左・右)と両手試行(同位相・逆位相)で、それぞれ3回ずつ実施しました。片手単独試行と比較して両手同位相試行では、利き手の速度が低下しました。その一方で非利き手の速度は増大し、同時に振幅が減少しました。両手逆位相試行では、片手単独試行と比較して、左右手の速度が低下し、振幅が増大しました。

概要

 東京大学大学院総合文化研究科の工藤和俊教授、宮田紘平特任講師、大学院生(博士課程)の東香寿美さん、および大阪大学大学院情報科学研究科の紅林亘特任准教授の研究グループは、右利きの健常者73名を対象に、最大速度での両手指の協調運動実験を行い、利き手では片手試行時より両手同位相試行時の動作周波数が低下し、非利き手では向上するという非対称な「両側性効果」が生じることを示しました。また、利き手の速度変化は片手運動時の左右の速度差、非利き手の速度変化は運動振幅の変化で予測でき、左右で異なる要因の関与が示唆されました。さらに、両手間の左右差を組み込んだ結合振動子モデルにより、同位相試行における動作速度の収束と、逆位相試行における位相の維持と速度の低下を、速度・振幅・安定性の関係として統合的に説明することに成功しました。

 本研究の知見は、体肢のコーディネーション効果を理論的に理解するための基盤となり、スポーツ・ダンス・音楽演奏を含む様々な身体スキルトレーニングへの応用につながることが期待されます。


発表内容

 左右の体肢の協調(コーディネーション)が必要になる運動は、体肢を単独で動かす運動に比べて複雑です。その背後にある組織化の原理を明らかにすることは、こうした高度な運動スキルのトレーニングを発展させるうえで重要な課題です。これまで、両手を同時に動かすと、片手だけで動かす場合に比べてパフォーマンスが低下することが知られていました(両側性機能低下, bilateral deficit)。しかし、左右の手は利き手・非利き手という異なる役割や能力をもつため、この効果が両手で一様に生じるのか、それとも手によって異なるのかは明らかではありませんでした。

 そこで本研究では、右利きの健常者73名を対象に、人差し指を10秒間、最大速度で屈曲-伸展させる運動課題を3条件(片手単独・両手同位相(注1)・両手逆位相(注2))で行ってもらい、人差し指の屈曲-伸展運動の角度変化から、動作周波数(動作の速さ)および動作振幅を測定しました。

 解析の結果、両手同位相試行において、利き手では単独試行時に比べて動作周波数が低くなり、非利き手では動作周波数が高くなりました。つまり、両手を同時に動かすと動作が遅くなる「両側性機能低下」と、逆に速くなる「両側性機能促通(bilateral facilitation)」が、同一個人内で共存することが明らかとなりました。また、両手逆位相試行では、両手とも大幅に動作周波数が低下し、動作振幅は増大することが示されました。さらに多変量回帰分析により、利き手の速度変化は、片手単独試行時の最大周波数の左右差が主な予測因子であり、一方、非利き手の速度変化は、片手と両手の振幅変化が重要な予測因子であることが明らかとなり、両手で異なるメカニズムが作用していることが示されました。

 さらに、両手間の非対称性を組み込んだ拡張結合振動子モデルを構築しました。このモデルは実験結果とよく一致しており、同位相における速度の収束(利き手の低下・非利き手の上昇)および逆位相における左右手の速度低下と振幅増大による位相の維持を、動作速度・振幅・協調安定性の相互関係として統合的に説明することに成功しました。

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動作周波数と動作振幅
動作周波数は、片手単独試行時に比べて、両手同位相の試行では利き手が遅くなり、非利き手は速くなりました。つまり、利き手においては両側性機能低下、 非利き手においては両側性機能促通が生じることが明らかになりました。一方、動作振幅は、左右ともに他の試行に比べて両手逆位相試行で増大しました。この振幅増大は、逆位相の協調パターン維持に貢献していることが示唆されます。

 なお、本研究は東京大学大学院総合文化研究科「人を対象とした実験研究に関する倫理審査委員会」の承認のもと実施されました。


発表者・研究者等情報

東京大学 大学院総合文化研究科
工藤 和俊 教授
宮田 紘平 特任講師
東 香寿美 大学院生(博士課程)

大阪大学大学院情報科学研究科
紅林 亘 特任准教授


論文情報

雑誌名:Journal of Neurophysiology
題名:Asymmetric bilateral deficit and facilitation in maximal-speed bimanual finger coordination(日本時間8月7日付掲載)
著者名:Kazumi Azuma-Takeshita, Kohei Miyata, Wataru Kurebayashi, Kazutoshi Kudo
DOI:10.1152/jn.00326.2025


研究助成

本研究は、日本学術振興会(JSPS)特別研究員奨励費(課題番号:22J15228,22KJ0979)、科研費基盤研究(B)(課題番号:24K02825)および身体性情報ネットワーク(クボタ)寄付研究部門研究費の支援により実施されました。


用語解説

(注1)両手同位相:左右の人差し指が鏡面対称の動作様式

(注2)両手逆位相:左右の人差し指が同じ方向に動く非対称の動作様式

―東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 広報室―

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