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最終更新日:2018.07.09

教養学部報

第602号 外部公開

地域未来社会連携研究機構の紹介

松原 宏

ここ数年、コースのガイダンスには、部屋いっぱいに学生の皆さんが集まってきます。理由を聞いてみると、残念ながら教員の魅力というよりも、大都市よりも田舎、しかも中山間地域や離島に身を置いて、行動してみたい、という人が増えているように感じます。これまでも東京大学では、研究所や研究者個人が、さまざまな地域に関わってきました。けれども、統合したプラットフォームがないために、それらの成果が大学全体で共有されることはほとんどありませんでした。今年の四月一日に、東京大学の正式の組織として設置された地域未来社会連携研究機構(以下、地域未来機構)では、地域の課題解決に関わる東大内の十の部局(総合文化研究科、工学系研究科、人文社会系研究科、農学生命科学研究科、経済学研究科、新領域創成科学研究科、社会科学研究所、先端科学技術研究センター、空間情報科学研究センター、政策ビジョン研究センター)が連携することで、地域の未来に関わる研究・地域連携・人材育成の三局面で、相乗効果を発揮することを目的としています(図)。

地域未来機構は、駒場Ⅰキャンパス内に事務局を置き、自然環境学、地理学、都市工学、農学、経済学、社会学、空間情報学など、多様な分野の研究者によるフィールドワークの成果と、GIS(地理情報システム)によるビッグデータの解析やマッピング等を統合して、新たな「地域の知」を構築することをめざしています。

地域に関わる研究者は、大きく二つのタイプに分けられます。伝統的かつ多数派は、それぞれ自らのフィールドと称する現場をもっていて、個々の農家や企業への聞き取り調査や住民へのアンケート調査を丹念に行い、フィールドワークの成果を著作や論文にまとめていくという、いわば「虫の目」で地域に向き合っています。これに対し、未だ少数派ながら、最新のテクノロジーを用いて、広域的な範囲の衛星画像や携帯電話の位置情報、メッシュ毎の統計資料など、ともかく大量なデータを四六時中コンピュータ画面に向かってひたすら処理し、解析の結果を図表化、地図化し、成果として公表するという、いわば「鳥の目」で地域に向き合う研究者が最近は増えつつあります。一方は現場に出たがり、他方は研究室にこもりがち、こうしたタイプの異なる研究者を、地域未来機構では、ワークショップで引き合わせ、あるいはまた同一のフィールドで寝食をともにしてもらい、両者の議論を通じて、新たな発見を蓄積していき、これまでにない研究成果にまとめていくことをねらいとしています。

また二〇一九年度には、RESAS(地域経済分析システム)やGISによるデータ分析、フィールドワークを重視した学部三年、四年生向けの部局横断型教育プログラムを設置する予定です。駒場と本郷で開講される科目と地域の現場での政策立案実習を修得し、地域の課題に応えるプロフェッショナル人材を育成することをめざしています。

さらに、日本国内の八つの機関(国立社会保障・人口問題研究所、公益財団法人九州経済調査協会、公益財団法人中部圏社会経済研究所、公益財団法人東北活性化研究センター、公益財団法人中国地域創造研究センター、一般財団法人北陸産業活性化センター、一般財団法人日本立地センター、株式会社日本政策投資銀行)が、学外の連携先となっており、共同研究や人材交流をはじめ、地方ブロック圏域の政策に関わることを通じて、グローバルだけではなくローカルでも、東京大学の存在感を示していければと考えています。

今後、地域未来機構では、ワークショップやシンポジウムを通じて、研究室の垣根を越えて、教員そして大学院生や学部学生の活発な交流を進めていく予定です。駒場で学ぶ皆さんの中で、地域に関心のある方はぜひ、地域未来機構の活動に注目していただき、議論の輪やフィールドワークに加わっていただくことを期待しています。

(地域未来社会連携研究機構 機構長/広域システム科学/人文地理学)

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