教養学部報
第672号 ![]()
〈後期課程案内〉 教養学部統合自然科学科 大跳躍への発射台─駒場キャンパスの理系学科「統合自然科学科」へのいざない
統合自然科学科長 澤井 哲
https://www.integrated.c.u-tokyo.ac.jp/
これからの時代に、どのような学びの場を選ぶべきでしょうか。
みなさんが他大学に進学していたら、おそらく出会うことのなかった学科があります。それが統合自然科学科です。
少し大きな話から始めます。
私たちの起源をたどると、脊椎動物、後生動物、真核細胞の祖先、さらには原核細胞へとさかのぼり、やがて地球、宇宙の誕生に行き着きます。人類みな兄弟どころか、生命はみなつながっています。
この長い歴史の中で、いくつかの決定的な大転換が起こってきました。最初の細胞の誕生、真核細胞の出現、多細胞化、さらには動物社会の形成です。これらはいずれも、それまでには存在しなかった。新しい階層が立ち上がる瞬間でした。化学反応のスープから、細胞というシステムが生まれた瞬間は、まるで神話のようで、想像するだけで胸が踊ります。ゼロから1が立ち上がる、本当の意味での「大跳躍」です。
こうした進化における大転換の問題は、それまで空白だった領域に生命が爆発的に広まる過程で、どのようなイノベーションがあったのかという問いを投げかけます。確かなことは多くありませんが、ひとつ言えることは、似たもの同士の集団の中で生じるわずかな違い(ずれ)が、相互作用を通じて特定の方向に増幅され、やがてまったく新しい存在を生みだしたであろうということです。
いま私たちは、新たな大転換のただ中にあります。大規模言語モデルなどの新たな情報処理技術の発展によって、私たちの思考や社会のあり方そのものが変わりつつあります。そのような時代にあっても、みなさん一人一人が、どこに立ち、どこへ向かうのかは、それぞれの経験、価値観、信念に根ざしています。デジタル空間上の情報に対して、あなたが何を求め、どう受け取るかには、必ず個人ごとの「ずれ」があります。あなたがあなたであることの希少性とは、その「ずれ」が一貫した軸に沿ってずれ続けていることにあるのかもしれません。生命の大跳躍に照らし合わせてみると、この「ずれ」こそが、あなたの固有性であり、可能性です。
この変化の速い時代においては、学術の世界でも実業の世界でも、既存の枠組みの外に構造を見出したり、異分野を結びつけたりしながら、複雑な問題をとらえる力が問われています。サイエンスは本来ひとつであって、それをどのような軸や文脈で学び、実践するかは十人十色であってよい。これが、統合自然科学科の基本的な考え方です。
本学科では、「数理自然科学」「物質基礎科学」「統合生命科学」「認知行動科学」「スポーツ科学」の五つのコースを設けています。各分野の基礎をしっかりと学びながら、コース間の垣根をできるだけ低くすることで、みなさんの関心に応じた柔軟な履修を可能にしています。所属コースにおける専門科目を中心に専門性を深めることも、他コースや他学科の科目を組み合わせて分野横断的に学ぶこともできます。後者の場合には、副専攻やサブプログラムとしての修了認定を受けることも可能です。これまでにも多くの学生がこの仕組みを活かしてきました。また、教職課程にも対応しています。
もっとも、分野横断的に学ぶためには、中心となる軸が不可欠です。各コースでは、専門を固めるための講義、演習、実験を厳選し、必修科目として配置しています。さらに、統合自然科学セミナーでは、少人数で教員と学生同士が密に議論し、学び合います。ここでは単なる知識の習得にとどまらず、論証力や問題設定能力、発表力といったいわば「知の実践力」を磨きます。これもまた、本学科の特色です。
統合自然科学科には、異なる背景や関心をもつ学生が集まります。進化における大跳躍がそうであったように、仲間と切磋琢磨するなかで、自らの「ずれ」を伸ばし、軸を見出し、それを起点に未踏の領域へと踏み出す─そのような場です。興味をもった方は、ぜひ軽食付きのランチョンセミナー「駒場サイエンス倶楽部」に参加してください。多様で、多彩な教員陣による最先端研究に触れることができます。
あなた自身の「大跳躍への発射台」として、本学科をぜひ進学先の候補として考えてみてください。
(統合自然科学科長/相関基礎科学/物理)
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