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研究科長・学部長挨拶(2017年4月~2019年3月)

駒場の多様性と一体性

大学院総合文化研究科長・教養学部長
石田 淳(いしだ あつし)

img_2017.jpg上空から2017年の駒場を俯瞰すると、幸いなことに駒場は依然として落ち着いた緑の中にあります。視野を広げれば、駒場の緑はさらに南西の駒場野公園と北西の駒場公園(旧前田家の洋館・和館と日本近代文学館の所在地)の緑ともつながっています。キャンパス――正確には駒場Ⅰキャンパス――の中央に配置された1号館(時計台のある旧本館)、900番教室(旧講堂)そして博物館(旧図書館)は1930年代の建物で、旧制第一高等学校の面影も感じられます。

この《2017年の駒場》という時空間を共有するのが、総勢9,000人を超える多彩な顔ぶれです。最大集団は言うまでもなく前期課程(1・2年)の学部生で、文科Ⅰ類から理科Ⅲ類までの6,600名。加えて、このカテゴリーにおさまらない学生(学部生、大学院生、研究生)として、教養学部後期課程(3・4年)の学部生400名、大学院総合文化研究科の大学院生・研究生1,500名、大学院数理科学研究科の大学院生・研究生200名。そして、この三層(前期課程、後期課程、大学院)の学生に教室で向き合うのが教員(教授・准教授・講師・助教)400名、さらに学生・教員の毎日を担い、支えるのが事務系職員・技術系職員100名。これだけの面々が縦横に行き来する駒場キャンパスは、張り詰めた空気が覆う入学試験、桜色の喜びに包まれる入学手続き、サークル・オリエンテーション、秋晴れの銀杏並木が来場者にあふれる駒場祭、達成感に輝く卒業式・学位記授与式など、一年を通じて実に豊かな表情を見せてくれます。

構成員において駒場が多様なのは、単にこの規模ゆえではありません。駒場の多様性は、本学の前期課程教育の理念に由来するものです。

本学は、高校卒業・大学入学段階の限られた知識・情報や先入観を頼りに学生がその進学先を選択するのは適切ではないと考え、前期課程教育を通じて十分に見識を広げ、断片的な知見を関連づけるとともに、的確な判断力を養ったうえで志望先を選択する体制を整えています。駒場では、精緻ながらも壮大な学知の基礎力涵養をめざして、外国語から人文学、社会・自然科学までの幅の広い前期課程教育を、文科・理科の多様な学生集団を対象に、多様な教員集団(前期課程科目の開講責任母体たる前期部会は27を数えます)が行っているのです。

知の地平を広げつつ、専門分化する研究・教育は、学問領域の枠を超えて(「超域」)、あるいは学問領域の間を行き来して(「学際」)、断片的な知見を連結・統合する総合的な知的探究への活力を生み出します。というのも、断片的な知見を相互に関連づけて理解できなければ、一つの問題の解決を意図する試みも、他の問題の発生につながりかねないからです。たとえば、エネルギー供給から社会保障に至るまで、持続可能性が問われる問題について考えてみれば明らかなように、現世代の問題解決の試みも、次世代に「負の遺産」を残しては意味がありません。

広範な前期課程教育の責任部局であればこそ、本部局における後期課程および大学院修士・博士課程における研究・教育も、学知の基礎の探求と学際的・国際的総合の模索をその特徴としているのです。駒場における後期課程、大学院の組織名称をご覧いただければ一目瞭然ですが、知的活動のキーワードは、多様性の中の一体性を表す「総合」、「統合」、「相関」、「学際」、「国際」等の修飾語にほかなりません。

知的な多様性と一体性は、長い歴史を持ちながらも老いることのない駒場キャンパスの活力の源泉なのです。

平成30年度 教養学部学位記伝達式 教養学部長式辞(平成31年3月26日)
平成30年度 PEAK/GPEAK 新入生歓迎式典 教養学部長式辞(平成30年9月21日)
平成30年度 入学式 教養学部長式辞(平成30年4月12日)
平成29年度 教養学部学位記伝達式 教養学部長式辞(平成30年3月23日)
平成29年度 PEAK/GPEAK 新入生歓迎式典 教養学部長式辞(平成29年9月22日)
平成29年度 学部入学式 教養学部長式辞(平成29年4月12日)

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