HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報672号(2026年5月 7日)

教養学部報

第672号 外部公開

〈後期課程案内〉 教養学部 教養学科 興味のかたちをつきとめる

教養学科長 原 和之

https://www.c.u-tokyo.ac.jp/guidance/depart01.html

 新入生のみなさんは、入学式が終わってひと月ほどがたち、ようやく授業等も決めて、忙しいなりに毎日のペースもできた頃ではないかと思います。そうしたところへたいへん気の早い話ではありますが、『教養学部報』の今号では、みなさんが二年後に進学する「後期課程」のさまざまな学部が紹介されています。進学先を決める「進学選択」のプロセスは来年度二年次に予定されており、それに先立ってできるだけ早い機会に多くの選択肢を知っておいてもらいたい、という趣旨の企画ですが、その選択肢のなかにはこの教養学部も含まれていることをご存じでしょうか。

 みなさんが今いらっしゃる教養学部前期課程では、多くの教員が学部一、二年生を対象とした教養教育に携わっています。専任教員だけでも昨年五月時点で三九〇名という規模になりますが、そのそれぞれが文理にわたるさまざまな研究分野を持ち、活発に活動しています。このうち主に文系教員が中心となって、学部三、四年生向けにより高度な教養教育を提供するのが以下に紹介する教養学部後期課程教養学科で、これは「超域文化科学分科」「地域文化研究分科」「総合社会科学分科」の三分科からなっています。

 何やら見慣れない名前が並んでいると思われるかもしれませんが、これはそもそも教養学科の特色と深く関係しています。文系の教養学科、文理融合の学際科学科、理系の統合自然科学科の三つを束ねた教養学部後期課程は、その教育の共通目標として「越境する知性」を掲げています。私たちが現実社会のなかで、あるいは研究のなかで直面する問題には、一つの学問分野、一つの国や地域の枠には収まりきらないものも数多くあります。そうした問題─しばしば新しい、現代的な問題─への取り組みでは、複数の学問的・地理的領域の間を行き来し、場合によっては新しい学問分野を立ち上げることさえ行われてきました。言い方を変えれば、問いの対象に寄り添う態度が求められてきたわけですが、教養学科の三分科名は、そうした対象の持つべき広がりを妨げないよう設定された、三つの緩い括りを示すものとみることができるように思います。

 まず超域文化科学分科は、ことばと文化を対象として、これに領域横断的にアプローチする七つのコース、「文化人類学」「表象文化論」「比較文学比較芸術」「現代思想」「学際日本文化論」「学際言語科学」「言語態・テクスト文化論」からなっています。ついで地域文化研究分科は、世界のさまざまな地域を対象に、そこでみられる文化的・社会的事象について複数のアプローチを提供する、「イギリス研究」「フランス研究」「ドイツ研究」「ロシア東欧研究」「イタリア地中海研究」「北アメリカ研究」「ラテンアメリカ研究」「アジア・日本研究」「韓国朝鮮研究」の九コースに分かれています。さらに「総合社会科学分科」の「相関社会科学」および「国際関係論」の二コースでは、それぞれ社会を対象とする諸科学を横断的に学んだうえでさまざまな社会現象を包括的に理解し、あるいは国という単位を超えたところで成立する国際社会やグローバル化した現代社会の多様な側面を分析する仕方を学ぶことができます。加えてPEAK国際日本研究コース(Japan in East Asia(JEA))も教養学科の一部となっており、ここでは日本を東アジアのなかに位置づけつつ、その文化や歴史、政治、経済を英語で学ぶ道が開かれています。

 詳細については学部サイトの教養学科紹介ページやそこから辿ることのできる各コースのサイト、また各大学院専攻のサイトなどを参照いただければと思いますが、さらに細かく各教員の紹介などもご覧いただければ、教養学科にスタッフとして関係する二〇〇名近い教員が、それぞれの分野の第一線で個性的な活動を展開していることが確認できることと思います。みなさんのなかには前期課程の授業を通してそうした教員らの謦咳に触れ、早々に進学先を絞るひともいるでしょうし、そうしたいわば間接的なアーリーエクスポージャーの機能は前期課程の制度設計の目指すところでもあります。しかし他方で、なかなか目指す道がみつからないという方や、逆にやりたいことがありすぎて困るという方もいるかもしれません。そうしたみなさんにとっても教養学科は、魅力的な選択肢になるはずです。

 この春卒業した学生の何人かに教養学科の良かったところを聞いてみましたが、一様に垣根の低さをあげていたのが印象的でした。先ほど「ことばと文化」「地域」「社会」を三分科のそれぞれに対応させましたが、この対応はもちろん排他的なものではなく、自身の興味に従った結果として他の分科・コースの授業を取るということはしばしば起きます。希望すれば履修のもう一つの軸を設定することができる「サブメジャー」制度も、こうした履修スタイルを促しています。かくして同じ教室のなかにさまざまな所属の学生が集まることになるわけですが、これは「学際」や「国際」といった抽象的なことばで言われる事柄の、はじまりの姿ではないかと思っています。そして将来において自分の領域から一歩を踏み出す、そのフットワークを準備するという以上に、教養学科はまずみなさんが、多様な選択肢のなかで自身の興味のかたちをつきとめるための試行錯誤に、格好の場所を提供できると信じています。

(教養学科長/地域文化研究/フランス語・イタリア語)

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